管理人の日記 〜2000年6月〜先月日記トップ翌月
6月27日(火) 発掘された日本列島2000
 「文化財保護法50周年記念 発掘された日本列島2000−新発見考古速報展−」が今年も江戸東京博物館ではじまった。来年2月まで全国7ヶ所の会場をまわる。
 今回は先輩を通じて招待券を手に入れていたので、早速行ってみた。初日だが、平日の午前中で人はそれほど多くない。ちょうど文化庁の人によるボランティアガイドへの説明が行われていたので、これにくっつきながら見て回った。

 旧石器時代では小鹿沢水迫という生活遺構関連の資料が目を引く。冠遺跡の大きく復原された接合資料見ごたえがあった。
 続いて縄文時代。中央にカリンバ3遺跡(北海道)の土坑墓が再現されており、出土品の展示だけではわからない出土状況の把握ができる。鮮やかな朱の腰紐や櫛、緑色の勾玉をはじめとする玉類などは縄文人の色彩感覚を探る手がかりになるだろう。
 大平山元1遺跡(青森県)の土器片。土器作り開始年代の転換を迫った資料だが、実際に見てみると実に小さなものであった。
 道訓前遺跡(群馬県)の縄文土器群はすごい。チラシにも使われた今回の縄文の目玉のような土器だが、念入りな装飾のあるこの北関東の土器は火焔土器や水煙土器にもひけを取るまい。和台遺跡(福島県)の人体付土器や新田2遺跡(岩手県)の注口土器や精密な石棒なども精神文化に興味のある私にはたまらない。
 精神文化といえば、「青森遺跡探訪」でおなじみの三内丸山(6)遺跡出土のクマたち(単体のクマだけでなく、土器付クマ、石皿付クマ)も展示されている。
 このほか、松ヶ崎遺跡(京都府)から出土した前期の植物(ヤマノイモ、トチ、クルミ、エゴマなど)や、低湿地遺跡である下宅部遺跡(東京都)の飾り弓・漆塗土器や礼文島船泊遺跡出土の南島との交易を示す資料も興味深い。

 弥生の資料もいろいろ興味深いのだが、中でも銅鐸の起源を探る上で重要な東奈良遺跡(大阪府)の小銅鐸、石川県の八日市地方遺跡出土の鳥形木製品、魚形木製品は面白い。青谷上寺地遺跡(鳥取県)の資料は弥生人の生活を具体的な形で示すもので楽しい。古墳時代では奈良県池田遺跡の「ミズラを結い冠・弓・靭を身につけた武人埴輪」が特に印象に残っている。
 また、古代の山王廃寺(前橋市)や結城廃寺(茨城県)、大野寺跡の土搭などの資料は初期の仏教文化の一端が伺える。

 さて、昨年度から東京会場でも地域展示が始まったが、今回は「縄文空間」と題した展示であった。東京都埋蔵文化財センターの創立20周年を記念して多摩ニュータウン地域の縄文土器を並べたものである。早期から中期までの土器51点とNo.72遺跡の最新資料が展示され、配布されたリストにはそれぞれ出土地、型式名などが書かれており、型式の違いを見比べるの役に立っていた。
 全国展示に比べ、空間的には狭く、大した演出も無く、ただ土器を並べただけというのが惜しかったが、それでも私には十分見ごたえのあるものであった。

 東京会場での展示は7月20日(木・祝)まで。

 江戸東京博物館企画展示室「文化財保護法50年記念「発掘された日本列島2000」展」
 東京都埋蔵文化財センター公認私設ウェブページ展示インデックス
   (チラシに基づく展示リスト 実際とは多少異なるが、地域展示「縄文空間」のパンフ(PDF版)も)


6月17日(土) 河川環境と信仰
 本日、國學院大學において祭祀考古学会の平成12年度総会と記念講演会が開催された。祭祀考古学会では、本年度「考古学の辺諸学から見た祭祀」をテーマに、関連分野から講師を招いてお話をうかがうということである。今回は近畿大学の野本寛一先生が民俗学の立場から「河川環境と信仰」というテーマで大きく3つのお話をされた。
 まことに申し訳ないのだが、私は野本先生についてはほとんど知らなかった。もちろん、書店で著書のタイトルくらいは見ており、関心はあったのだが実際には読むことなく今まで過ぎてしまった。しかし、本日の講演は予備知識がない私にも非常に興味深い内容であった。

 はじめに大場磐雄先生との思い出を語られたが、大場先生から「現地を見ること」を教わったというお話があった。その地域の景観を非常に気にされたというのである。目的地だけ見ることが多い私だが、きちんと見習うべき点である。

 本題に入るとまず、河口閉塞・合流点閉塞・峡谷閉塞についてのお話であった。これらは自然の作用で土砂などが堆積し川が埋まってしまうことをいうらしい。特に河口部・河川の合流点・細い谷などが詰まってしまうと川の水位が上がり水浸しになってしまう。これを避けるため神を祀ったというのである。
 今日のお話では、その一例として、木津川の流れが大きく曲がり、しかも4つの河川の合流する地点に祀られている相楽神社(式内社)の祭礼を取り上げられた。ここでは、宮座によっていくつか祭礼が行われるが、その中に年頭に雨量を占う年占の行事が2度、夏に台風除けのお籠りが2度あるという。この地の人々の洪水除けへの思いがわかる。この他にも峡谷閉塞の例として大井川に残る神社の流失伝承や伊賀上野近くの岩倉峡が塞き止められた事例などを紹介された。

 次に潮の満ち引きと祭礼との関わりについてお話された。熊野川や四万十川などで行われる船渡御の祭礼がいずれも潮が満ちる時期に行われているというのであり、お盆の精霊流しも同様だという。祭礼という信仰に基づく行事であっても自然環境と大いに関わってくるというわけである。

 3つ目は、舟形屋敷のお話であった。大井川流域での事例であるが、新田開発によって開かれた地域で、屋敷を舟の舳先のようにつくり、用水を左右に流し、先端部分に開墾で得た石を積み墓地としたりするのである。集落でもこのような形(舟形集落)のものがあり、先端部には神社や寺院を配置するという。

 なぜその場所に神が祀られているか?という問題を解く上で、環境を考慮するという視点は欠かせないものであるはずである。しかし、山や島など目立つものを除き、神社の立地と自然環境の関わりはこれまで十分考えられてこなかったようである。
 最後に野本先生は、民俗学でも考古学でも神道学でも、日本の神の概念は未だに明らかにされていない、とおっしゃった。この問題を解決するには、冒頭に話されたような現地をしっかり見る−それぞれの地域の性格を詳しく把握することが必要になるのだろう。
 また、考古学においては遺跡の立地解釈の際、このような関連分野の視点を積極的に取り入れることが重要になってくるはずである。
 そうした意味で、今日の講演会は祭祀考古学に相応しい、面白い講演会であったように思う。


6月7日(水) 写真乾板の活用と保存
 3月27日付けトピックスでお伝えしたように、國學院大学では日本文化研究所が中心となって「劣化画像の再生活用と資料化に関する基 礎的研究」を行っている。
 前回の時点では書けなかったのだが、この時お誘いを受け、4月からアルバイトとして大場先生のガラス乾板をスキャニングする作業を手伝わせてもらっている。写真やそれを収めたケースの書き込みと、先生の『楽石雑筆』や報告書などを照らし合わせ、さらに大場先生をよく知る先生方のご協力を得てデータベースを作成する。現時点では私は専らスキャン作業を行っているが、まだまだその全貌は分からない。
 丁寧に保存されていたため、多くの乾板はきれいな状態で残っている。しかし、ニジだとかハクリだとか、用語はよく分からないが、ともかく劣化している乾板がしばしば出てくる。私としてはスキャニングする資料が1つ減るので楽だが、やはり貴重な資料が劣化するのは心が痛む。まさか、デジタル化すれば不要だと言うわけではあるまい。これらはどのようにすれば保存できるのだろうか。

 幸いなことに、第2回目の講演会としてこの問題が取り上げられることになったようである。
 お話してくださるのは東京都写真美術館の荒井宏子さん。テーマは「記録資料を後世に残す−写真の劣化と保存方法−」という。7月15日(土)、國學院大學常盤松2号館にて。
 写真については興味はあれども知識は全くなかった私だが、フィールドワークには欠かせない写真について、これを機会にいろいろ学べたらと思う。関心のある方は是非いらしてください。
 講演会についての詳細は下記ページもしくは山内利秋さんへ。

國學院大學日本文化研究所:第2回 学術フロンティア公開講演会のお知らせ


6月2日(金) 久しぶりの調査見学
 昨日、先生に連れられて1・2年生何人かで横浜市内の遺跡の調査現場を見学しました。
 段丘上にひろがる中期中頃の集落跡で、今回の調査区は集落の一部部分ですが、既に周辺の調査も行われ、集落の構造がある程度明らかになっています。
 久しぶりの現場でしたが、いろいろ考える材料を得られたと思います。


5月15日(月) 祭祀考古学会総会・講演会のお知らせ
 祭祀考古学会の事務局から次のような連絡をいただきました。
平成12年度 祭祀考古学会 総会・講演会のお知らせ

祭祀考古学会平成12年度の総会講演会を下記の通り開催致します。皆様、ふるってご参加下さい。
           記
講演会「河川環境と信仰」
講 師 野本寛一氏(近畿大学文芸学部
日 時 平成12年6月17日(土)15:00〜17:00
場 所 國學院大學渋谷キャンパス常磐松2号館3階大会議室
会 費 会員無料 一般500円
連絡先 國學院大學日本文化研究所内 祭祀考古学会事務局
     〒150−8440 東京都渋谷区東4-10-28
     Tel:03-5466-0356 Fax:03-5466-9237

  ※なお講演会の後に、懇親会(会費2,000円前後)を予定しています
 祭祀考古学会は広く祭祀全般について考古学的に研究していこうという学会である。バイト先に事務局がある関係で今年度から私も参加させていただいている。
 情報交換誌『情報祭祀考古』の最近号を見ると縄文の石棺墓から近世の墓標、沖縄の祭祀まで様々な事例が祭祀を切り口に紹介されている。祭祀というテーマで統一されているため、これまで殆ど読んでいない他時代の例でも抵抗なく読むことができ、面白いものであった。。
 まだ細かいことについては分からないが、今後の研究会が楽しみである。

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