管理人の日記 〜2000年10月〜先月日記トップ翌月
10月8日(日) 縄文後晩期の華と中期の大集落
 少し前のことになるが、夏休みも最後の9月10日〜22日、私はとある学術調査に参加した。調査の成果についてはここでは触れないが、10人くらいの合宿で、自分たちで3度の飯を用意し、険しい道を器材を背負って往復したり、細かな遺物も見逃さぬよう水洗洗浄したり、先生や先輩、友人たちと話しをしたりと、貴重な体験をすることができた。調査のために地元の方々がさまざまな便宜を図っていただいたことや、現場までの道沿いの沢や林・帰りの星空の美しさも忘れられない。有意義で楽しい2週間であった。

 さて、現在、川崎と横浜で縄文時代をテーマにした企画展が行われている。1つは川崎市市民ミュージアムの企画展「縄文の華」、もう1つは横浜市歴史博物館の特別展「発見!巨大集落−大熊仲町遺跡と縄文中期の世界」である。今日この2つの展示を見学してきたのでいくつか感想を書いておこうと思う。

 「縄文の華」は文化財保護法50年記念企画の一環として行われたもので、縄文後期〜晩期の優品を集めた展示である。まず、蒔内遺跡の土偶頭部、手代森遺跡や遮光器土偶、後谷遺跡や赤城遺跡のみみずく土偶、金生遺跡の土偶など著名な土偶が並ぶ。つづいて土版・岩版のコーナー。石棒・石剣・石刀、石冠や独鈷石もある。動物形土製品。十腰内のイノシシやなどが並ぶ。はじめて見たわけではない物もあるが、イメージよりも小さく感じられた。土器の展示もある。大洞B式からA'式までの6段階それぞれの時期の壺、皿などが並んでいた。三叉文→羊歯状文→雲形文→工字文という変遷がよくわかる。また、同時期の各地の注口土器や、各地域の異系統土器などの展示もある。やはり亀ヶ岡土器の精巧さは比べてみるとよくわかる。
 この展示の、おそらく子供向けの解説パネルはなかなか楽しい。土版・岩版などの箇所では、「この展示を縄文人が見たら笑われるかもしれないね」などとある。考古学研究の限界を感じさせるようなパネル1つ1つにいろいろ考えさせられてしまった。
 さて、この川崎市市民ミュージアムは中原区の等々力公園の一角に1988年にオープンした総合ミュージアムである。歴史・民俗などとともにマンガや写真などの展示コーナーもあっておもしろい。

 つづいて横浜市歴史博物館へ向かう。港北ニュータウン内の大塚遺跡(弥生の環濠集落)に隣接して1995年オープンした。4年前の春に行われた桜並遺跡を中心とした「幻の縄文土器の時代」展、秋に行われた花見山遺跡を中心とした「縄文文化誕生」展を見に来て以来である。今回の特別展「発見!巨大集落−大熊仲町遺跡と縄文中期の世界」は大熊仲町遺跡の報告書が刊行されれたことを受け、東日本の縄文中期の巨大集落の資料を集めて行われている。
 まず、東日本の代表的な巨大集落として円筒土器圏の三内丸山遺跡、大木式土器圏の法正尻遺跡、焼町・三原田土器を出す三原田遺跡、曽利式土器圏の聖石遺跡・棚畑遺跡、阿玉台・加曽利E式土器圏の子和清水貝塚、馬高式土器圏の清水上遺跡、そして横浜市内の大熊仲町・三の丸・神隠丸山・二の丸・月出松・泉警察の各遺跡が全体図や出土した土器などをもとに紹介されていた。巨大集落というのがどの程度の規模の集落のことを言うのかはわからないが、100軒以上の住居跡が密集してしている写真の連続は壮観である。同じ場所に何代にも渡って集落が営まれていたという共通点を持つこれらの遺跡だが、それぞれ異なった土器を見ることができたのは面白かった。
 つづいて大熊仲町の分析結果。勝坂期〜加曽利E4期までに13の住居型式が認められると言う。平面形や柱穴の配置である程度の変遷がわかるということは多摩ニュータウンNo.72遺跡でも伺ったが、そういった分析ができるのも大集落ならではのことであろう。石器や骨角器、中期のバラエティー豊かな土器なども展示してあった。釣手土器や把手付土器、人面装飾付土器などもいいのだが、新潟県塩沢町の五庁歩遺跡出土の四足土器には驚いた。完形でないのが残念だが、初めて見た形で興味をそそられた。また、横浜市三の丸遺跡の柱状の体部と球形の頭部が組み合わさったという石棒も目を奪われた。組み合わせて立たせた復原写真もあったが、本当にそのように使われていたのだろうか?詳しく調べてみたい。中央には大熊仲町遺跡出土の土器がピラミッド状に展示されている。中期の土器らしいさまざまな文様で飾られていている土器ばかりだが、できれば土器型式毎に並べてほしかった。
 ヒスイや黒曜石の流通に関する展示があって、最後に岡田遺跡、愛名沖原遺跡、当麻遺跡の3つが神奈川県内の巨大集落が紹介されて、後期の巨大集落の終焉へと続く。展示は会場を出てさらに「巨大集落の発掘」というコーナーで終わる。大熊仲町遺跡は1977年から調査がはじまり、79年に終了したというが、その間の様子が写真パネルで紹介されていた。今回は中期の大集落に伴う土器を主に見てみた。

 川崎と横浜の2ヶ所の特別展だが、中期から晩期の縄文文化の粋を集めた遺物が見られたのはよかったと思う。

 川崎市民ミュージアム文化財保護法50年記念「縄文の華」解説
 
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