管理人の日記 〜2005年6月〜先月日記トップ翌月
6月5日(日) 関野貞・分類学・土偶・明大考古学
 東京大学総合博物館および明治大学博物館へ行ってきた。
 東大では、現在「東京大学コレクションXX:関野貞アジア踏査―平等院・法隆寺から高句麗古墳壁画へ」、「東京大学コレクションXIX:『Systema naturae』〜標本は語る〜」、「ヒューマン・イメージ−先史時代の儀礼と人物像」の3本の展示を開催中である。
 まずは、関野貞の展示である。関野は明治後半〜昭和初期の建築史学者で、日本・朝鮮および中国などの文化財調査・文化財行政に携わった人物である。展示は関野を「モノ」の研究方法を確立した人物、あるいは広大な地域の基礎資料を収集し、学問の確かな基礎を造った人物として、その調査・研究・文化財保護に関する資料を展示し、活動の足跡を探るものである、という。前半は、日本国内の古社寺の調査・修理を中心とする資料として、建築図面や模型、模写などが展示されている。ガラス乾板箱もある。また、東アジアの文化財保存制度に関する直筆資料も展示されている。後半では、朝鮮古蹟調査のうち古建築と高句麗壁画古墳に関する資料を中心に展示が構成されている。具体的にはフィールドカード、写真プリント、図面、壁画模写などである。
 この展示については、学者の研究資料の展示、および朝鮮古蹟調査について2つの視点から興味を持って見に行ったところである。前者については、フィールドカード・写真・原稿といった小さく薄い資料に加え、建築模型・壁画模写・建築図面・好太王碑拓本など大型の資料が適度に並べられていること、さらに壁画をもとにデジタル3D映像を作成したり調査のフィルムを流したりするなど動画を活用していること等が目に付いた。後者については、調査の旅譜や地図などを提示し、また建築時期を決めるための様式論、保存・公開に関する考えなど、関野の方法を紹介しており、関野の仕事が現在も生き残っている所以を知ることができた。

 「Systema naturae」はリンネの体系化を継承した現在の分類学の考え方を、東大所蔵の標本資料で示したものである。詳細に見たわけではないが、植物界・動物界とともに鉱物界が並ぶことは初めて知った。「ヒューマンイメージ」は、縄文土偶と西アジア新石器の土偶およびオセアニア等の民族資料を並べたもので、両者の共通性と差異性を考えようという趣旨のようである。ということであれば、人物像のみでなく、その歴史的コンテキストに関する実物資料も展示されていると良かったのではないかと思われる。
 なお、東京大学コレクションの両展については図録が発行されているようであるが、日曜閉店のコミュニケーションセンターで販売しているということで残念ながら手に入れることができなかった。

 次いで、明治大学博物館へ。企画展として「明大考古学55年の足跡」を6月30日まで開催中である。
 以前の考古学博物館には、平板・トランシットなど明大考古学研究室で使用してきた発掘調査の道具が冒頭に展示されていたが、リニューアル後は無くなって残念に思っていた。現在の常設展でも、遺跡の解説パネルに調査経緯が書かれているが、機材や図面等の展示はなく出土資料のみである。ということで、今回のこうしたテーマで企画展がはじまったということで期待して出かけていった。
 意外にあっさりとした展示だというのが正直な感想である。冒頭に「明大考古学発展史」と題したパネルが掲げられている。岩宿・登呂を出発点に、1950年から現在まで大きく旧石器〜古墳の4系統(さらに細かく分岐)に分けたもので、20のテーマ、約70の遺跡調査が明記されている。凝った展示はできないにしても、もっと品物を並べて欲しかったと思う。それはそれとして、堀ノ越貝塚の調査日誌(記入者名には「大塚初重」や「小林」とある)や加曽利貝塚の日誌(いずれも1950年代後半)をみると、その構成が宇津木向原(1960年代)の調査日誌と類似していることに気づいた。この当時の流行であろうか。
 明治大学考古学研究室では今年、『考古学集刊』特別号および『明治大学考古学専攻創設55周年記念論文集』を発刊した。本展もそうした流れに位置づけられるのであろう。振り返って、わが國學院大學は専攻設置は1966年であるが、坪井正五郎の人類学の講義(1905年)から100年、鳥居龍蔵教授の着任(1924年)から81年、戦後の國學院大學考古学会の発足(1948年)から57年が経つ。我々は『若木考古』100号でこの間の略年表をまとめ、現在『上代文化』の復刊を計画しているが、そろそろ記念事業を行なっても良いのではなかろうか。

東京大学総合研究博物館
藤井恵介「関野貞の仕事と人物」
大場秀章 「「Systema Naturae ー標本は語る。」展を企画して 」ほか

明治大学博物館:明大考古学55年の足跡


6月4日(土) 大学の調査今昔
 今年の3年生の考古学実習(伊豆実習)の勉強会が始まった。と同時に去年の報告書のほぼ最終的な読みあわせも行なわれたようである。多くの学生が何も分からない状態からスタートして1年間。この僅かな期間でのスキルアップは難しいが、実習の主体は交代していく。 さて、祭祀考古学会総会記念講演会として小出義治先生による「大場磐雄先生と古墳調査」が開催された。戦後の第一世代として、昭和20年代〜30年代に大場磐雄先生の下で行なわれた姉ヶ崎二子塚古墳、常陸鏡塚古墳、狛江亀塚古墳、松戸河原塚古墳、姉ヶ崎山王塚古墳の5ヶ所の調査について、2時間にわたりその経緯や成果をお話された。学生の数も意識も、社会状況も違う中での比較はできないが、その雰囲気はだいぶ異なっていたようである。
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