管理人の日記 〜2008年10月〜先月日記トップ翌月
10月29日(水) 第2回研究フォーラム「國學院における近代国文学の形成―武田祐吉の学問を中心に―」
 國學院大學伝統文化リサーチセンターの「國學院の学術資産に見るモノと心」プロジェクトの一環として「武田祐吉」をテーマとしたフォーラムが開催された。武田は折口信夫の同僚で、古事記・万葉集などの研究で知られる。
 はじめに、武田資料の整理研究を進めている渡辺卓氏(PD研究員)から略歴と資料の紹介があり、次いで、中村啓信氏(名誉教授)の講演があった。講演の中で中村氏は武田の古事記の読み解きを紹介されたが、あたかも武田の文献考証が再現された風であった。
 なお、11月に急逝された青木周平教授が、この日挨拶に立ち、武田−中村と続く学統の継承に意欲を示されたことは忘れることができない。(08.12.31)


10月25日(土) 2008年度フォーラム「伊豆の神仏と國學院の考古学」
 國學院大學伝統文化リサーチセンター「祭祀遺跡に見るモノと心」プロジェクトのフォーラムとして、「伊豆の神仏と國學院の考古学」と題した研究会が開催された。
 日時:平成20年10月25日(土)
 会場:國學院大學渋谷校舎AMC棟1階常盤松ホール
 発表者:
  吉田恵二(センター教授)「列島における祭祀の発生と展開」
  中村耕作(センターRA)「神道考古学の形成と伊豆の祭祀遺跡〜大場磐雄の伊豆調査〜」
  朝倉一貴・中島大輔(大学院)「三宅村物見処遺跡の発掘調査概要」
  田中大輔(センターPD研究員)「古墳時代における土器集積について」
  深澤太郎(センター助手)「うみやまのあひだ〜伊豆の神々とランドスケープ〜」
  内川隆志(センター准教授)「伊豆諸島の祭祀遺跡」
  栗木 崇(熱海市教委)「伊豆権現信仰関連遺跡について」
  外岡龍二(下田市史編纂委員)「南伊豆の祭祀遺跡」
 吉田教授は発表中、祭祀用の器に焦点をあて「手捏土器」など従来祭祀専用品のみで祭祀遺跡・遺物研究が行なわれてきたことを批判した。同様の趣旨は既に「人の器、神の器」(資料館紀要23輯)などでも述べられているが、今後の祭祀研究に欠くことのできない基本的な問題として受け止めたい。
 私は「國學院の学術資産にみるモノと心」プロジェクトの一環としての大場磐雄研究の立場から発表させていただいた。大場磐雄の「神道考古学」を4段階に区分し、見高段間遺跡・洗田遺跡・上多賀宮脇遺跡・姫宮遺跡など各段階で重要な位置を占めた伊豆の遺跡の調査・研究を検討し、各段階の特徴を整理した。
 朝倉・中島の両氏は考古学実習として20年以上調査してきた物見処遺跡の概要を紹介した。田中氏は伊豆の祭祀遺跡に特徴的な土器集積遺構を検討するため全国の事例を整理し、深澤氏は『三宅記』を紐解き、三島大社・白浜神社・三宅島それぞれの関係とその時期について検討した。内川准教授は伊豆諸島の祭祀遺跡、栗木氏は中・近世の伊豆山の祭祀関連遺跡、外岡氏は古代南伊豆の祭祀遺跡をそれぞれ検討した。(08.12.31)


10月13日(月) 大田区郷土博物館特別展「雪ヶ谷貝塚−縄文時代前期の文化と環境」
 特別展第2弾はこれも前日から始まった大田区郷土博物館の雪ヶ谷貝塚展。今度は前期の資料である。雪ヶ谷貝塚の報告書は既に2002年に刊行されているが、前期後葉諸磯式期の住居31軒・土坑52基が検出された、当該期の貴重な集落遺跡である。
 本展では雪ヶ谷貝塚を中心に、品川区居木橋遺跡、多摩ニュータウンNo.753遺跡、板橋区四葉地区遺跡、北区七社神社前遺跡、横浜市北川貝塚・西ノ谷貝塚などの近隣の代表的遺跡の資料を集めている。
 前期の資料にはあまりなじみは無いのだが、これらの遺跡の多くで副葬土器(多くは浅鉢)が見つかっており気にかかっていた資料である。先週の後期の資料と前期を比較しながらそれらをじっくり眺めることができた。埋納土器も大きめであること、口縁部の謎の孔(おそらく有孔鍔付土器につながるものと推察されているのだろう)が目立つこと、他の土器と胎土が異なるものがあること、などを体感することができた。副葬土器ではないが、大波状口縁土器や、レプリカであったが中仕切りのある土器、後期の小仙塚類型に類似した器形などを見るとこの時期の器形の多様化も、後期中葉・中期中葉と同様、無視し得ない。当初の博士論文の計画では、前期後半も検討することにしていたのだが、既に先行研究によって一定の成果があがっているので扱わないことにしたのだが、やはり触れなければならないだろう。などと考えながら、こちらも約1時間半を過ごさせていただきました。図録はオールカラーで600円と良心的。
大田区郷土博物館雪ヶ谷貝塚−縄文時代前期の文化と環境


10月5日(日) 横浜市歴史博物館特別展「縄文文化円熟−華蔵台遺跡と後・晩期社会−」
 秋の特別展シーズンがやってきた。まずは赤バックに美しい4点の注口土器を配したポスターが印象的な「縄文文化円熟」へ。本展は港北ニュータウンはもちろん神奈川県内でも数少ない後期中葉〜晩期前半にかけての集落である華蔵台遺跡の報告書刊行を機に、横浜市内ならびに近隣の後・晩期資料を一堂に集めて開催されるものである。
 はじめに港北ニュータウン地域の後・晩期の様相。私にとっては卒論調査以来親しんできた小丸・三の丸・山田大塚・そして華蔵台の小形副葬土器が展示の一角をなして展示されていたことに感激だが、それを含めて担当者の長年の研究成果である「核家屋」論がしっかり提示されている。晩期中葉以降の資料は港北には少ないので、川崎市下原遺跡、町田市なすな原遺跡、調布市下布田遺跡の資料もある。続いて、市内の貝塚からの出土品として、称名寺貝塚や青ヶ台貝塚、稲荷山貝塚などの土器・骨角器が並ぶ。さらに市原市祇園原貝塚・西広貝塚、小山市寺野東遺跡、蓮田市雅楽谷遺跡、鴻巣市赤城遺跡、山梨県金生遺跡などの大規模遺跡の代表的な遺物、たとえば西広の阿高系土器、釣手土器、雅楽谷の土坑一括資料、赤城の祭祀遺物集中地点出土遺物など、見ごたえのある資料が次々に登場する。最後に、土偶、動物形土製品、玉類、重文3遺跡の滑車形耳飾がきて終演。
 後期土器の素晴らしさを伝えるために誘った知人などそっちのけで、約2時間じっくりと堪能させていただきました。報告書は刊行後すぐに電話して購入したが、会場でも販売中。図録も充実しています。
 横浜市歴史博物館縄文文化円熟−華蔵台遺跡と後・晩期社会−


10月1日(水) 國學院大學伝統文化リサーチセンター資料館全面開館
 今年4月からの校史・学術ゾーンに加え、祭祀遺跡ゾーン、神社祭礼ゾーンを含めた全館がオープンしました。それぞれ従来の考古学資料館・神道資料館の収蔵品を「祭祀遺跡に見るモノと心」・「神社祭礼に見るモノと心」という伝統文化リサーチセンターのプロジェクトに沿って展示したものです。
 祭祀遺跡ゾーンでは、まずエントランスゾーンに、火焔土器(借用)、挙手人面土器、伝野洲出土銅鐸、姉崎二子塚古墳出土石枕などを配し、続いて考古学資料館開設者樋口清之をはじめ鳥居龍蔵・大場磐雄などの國學院の考古学の歴史を伝えるコーナーへと進みます。続いて壬・柳又・美利河といった考古学実習で発掘を行なってきた資料に加え、新たに寄贈された国分台、あるいは借用した泉福寺洞窟出土土器など旧石器時代から縄文時代草創期の資料が並ぶコーナー。そして、その奥からは壁一面に縄文土器・次いで弥生土器・さらに土師器・須恵器が所狭しと並び、その前面には第二の道具の集合展示、あるいはローケースに入った縄文の石器、骨角器、装身具、さらに古墳時代の馬具・武具、鏡、常陸鏡塚古墳出土の滑石製模造品、あるいは各地の祭祀遺物が続きます。中央には埴輪が並びます。中世・近世に入ると壁には板碑や蔵骨器、仏像・神像が立ち並び、ローケースには多数の和鏡や縣仏が置かれています。最後に外国資料を見てこのゾーンは終了です。
 ローケースの資料についてはまだ出土地の表示が無いなど、未だ展示作業は完了してはいないのですが、ともかく多数の実物に触れてもらうことを基本方針とした展示となっていますので、ぜひとも来館して、資料1点1点をじっくり観察していただけるよいと思います。
 なお、開館記念特別展として那智参詣曼荼羅をはじめとする神社資料による「祈りのカタチ−元々本々」も開催中です。

 國學院大學伝統文化リサーチセンター資料館
  場所渋谷校舎AMC棟地下1階
  開館時間10:00〜17:00
  休館日:日曜・祝日・その他大学の定める休日
 國學院大學伝統文化リサーチセンター資料館
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