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【1970年】
埋蔵文化財白書より】
1970年の日本学術会議第56回総会において採択された勧告

埋蔵文化財の保護についての勧告


 本会議は1864年第41会総会の議に基づいて、文化財保護について勧告した。政府はこれに応じていくつかの緊急措置を講じたが、その後の開発事業の急激な進展は政府の諸施策をのりこえて、とくに埋蔵文化財の破壊を頻発させている。この事態にかんがみ、政府ならびに関係諸機関は埋蔵文化財の保護について次の如き対策を至急に講ずべきである。

 一、埋蔵文化財を国民生活の中に積極的に活用・保護するため、開発と文化財保存の両面にかかわる研究者による審議機関を設けること。
 一、破壊を未然に防ぐため、遺跡の分布調査を促進し、開発計画の立案にあたって文化財保存の構想が必ずもりこまれるようにすること。
 一、開発のテンポにくらべて著しく立ち遅れている保存対策のための予算を大巾に増額すること。
 一、調査が学術的に誤りなく行なわれるよう、調査員の選定および調査方法については関係学会の意見を徴すること。
 一、著しく不足している研究者を養成し、また保護対策を発展させるため、基礎的な研究・教育の拡充をはかること。
 一、開発工事に伴う文化財の破壊についての規制を明確にし、罰則を強化するとと。 

  理 由
 近年の埋蔵文化財に対する破壊は (1)都市周辺における大規模な宅地造成 (2)農村地域における農業構造改善事業 (3)鉄道・道路の建設など公共事業などを直接の原因とするものがきわめて多い。
 これらの多くは、政府の国士開発政策にもとづいて展開されているものであるが、それらの多くが埋蔵文化財の保存に対する顧慮の不十分なままに計画がたてられ事業が推進されている。そのため建設予定地の中にふくまれた遺跡は、発掘調査がおこなわれる場合でも、調査結果をふまえて計画を変更して遺跡の保存される場合はきわめて稀で、形ばかりの調査を行ない、「記録保存」と称して破壊をみとめ、あるいはそれすらおこなわれず、聞から閻に葬り去られる場合が少なくない。これは調査がおこなわれる場合でも文化財保護のための予算によってでなく、「原因者負担」と称して建設者側から経費がでる場合が多く、金額や調査期限の制約をつよくうけ、さらに調査結果の如何にかかわらず、建設者例の一方的な判断が優先し、結局破壊の方向に押しきられていくからである。こうした実情が普遍化しているため、たとえば下関市綾羅木の例が示すように、民間業者が文化財保護法の不備に乗じて私利優先の破壊を強行するようなことが続発しても如何ともなしえないという状況である。
 このような事態を放置するならば、日本民族の歴史を明らかにする重要な手がかりが永久に、失われ、後世の指弾をうけることは
必定である。
 国際的にも1968年ユネスコ第15回総会は、「公的または私的の工事によって危険にさらされている文化財の保存に関する勧告」をおこない、加盟国がそれぞれの領域内において、この勧告に定める原則および基準の実施に必要な立法その他の措置をとることを刻下の急務として強く求めている。
 前記のような、埋蔵文化財保存における危機的状況に対応するため、政府はこのユネスコ勧告の線に沿って諸般の施策を講ずべきである。
 現在文化財の保護にあたっている各級の行政機関の多くは人員・予算に乏しく、保護対策をうらづける遺跡の分布調査や保存計画をたてるに充分な能力をもたず、破壊を未然に防ぐため、事前協議を開発者側とおこなうことすらできず、かえって自らが破壊を前提とする、行政措置としての発掘に追われて、本来の任務を放棄せざるを得ない状況である。 このように、開発に追われて緊急措置に終始するのではなく、今後は積極的に埋蔵文化財の分布調査をおこない、広域的に保存活用の計画をたてるように努めるべきである。埋蔵文化財の存在は発掘によって確認されるのであるが、無限に存在するものではない。国土の効率高い利用が求められているわが国では、これに計画的に対処することが必要であり、それによって無原則的な破壊が防止し得るし、史跡公園、緑地などとして国民生活の中に積極的に生かし、人類と民族の貴重な財産を保護活用する一石二鳥の効果を期待することができるのである。
 そのため、文化財保護のための施策の抜本的な拡充が求められるが、さしあたって、さきにのべた六項目の具体的方策の実施がのぞまれるのである。
縄文学研究室トップ法令集トップ管理人:Nakamura Kousaku
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