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【2000年】
【『月刊文化財』2000年11月号より】

埋蔵文化財の本発掘調査に関する積算標準について(報告)

平成12年9月 埋蔵文化財発掘調査体制等の整備充実に関する調査研究委員会


目次

第1章 発掘調査に関する積算標準についての現状と課題
1 積算標準の現状と課題
(1)これまでの経緯
(2)発掘作業についての積算標準の現状と課題
(3)整理作業等についての積算標準の現状と課題
2 標準策定のための検討方針と改善方策

第2章 本発掘調査の作業内容の標準

1 発掘作業及び整理作業等の内容に関する標準
(1)発掘作業
(2)整理作業等
2経費積算の標準と積算の実施

第3章 本発掘調査費の積算標準
1 発掘作業の積算標準
(1)作業量算出方法の基本的な考え方
(2)標準歩掛設定の区分
(3)補正項目とすべき要素
(4)標準歩掛と補正係数の実態調査と設定数値
(5)記録作成作業と諸作業の作業量算出
(6)延べ調査員数と発掘作業期間の算出
(7)都道府県における積算基準の設定と留意事項
2整理作業等の積算標準
(1)作業量算出方法の基本的な考え方
(2)標準歩掛と補正係数の実態調査とその設定数値
(3)整理作業等期間の算出
(4)報告書分量の目安
(5)都道府県における積算基準の設定と留意事項
3 経費積算上の留意点
(1)発掘作業経費の積算
(2)整理作業等経費の積算
4 標準の見直し

別紙
1 開発事業に伴う埋蔵文化財の取扱い工程
2−1 集落遺跡における発掘作業工程及び成果品の標準
2−2 竪穴住居跡の発掘作業・検出遺構の記録作業の標準
(1)竪穴住居跡の発掘作業工程及び成果品の標準
(2)竪穴住居跡における記録すべき内容の標準
3 整理作業及び報告書作成における作業工程の標準
(1)記録類の整理
(2)出土品の整理
(3)報告書作成
4 本発掘調査の工程と必要経費
5 本発掘調査経費の構成と費目

参考資料
I 調査研究委員等名簿
 1 委員名簿
 2 協力者名簿
II 調査研究委員会等の審議経過
 1 委員会の経過
 2 協力者会議の経過
III 埋蔵文化財の本発掘調査積算標準に関する実態調査集計結果
 1 発掘作業
 (1)各作業工程ごとの立地別標準歩掛
 (2)補正項目とする要素の影響
 (3)記録作成作業と諸作業の歩掛
 2 整理作業等
 (1)整理作業等に関する標準歩掛
 (2)整理作業等に関する補正項目と係数
 (3)報告書分量の目安

はじめに

 埋蔵文化財は我が国あるいは全国各地域の歴史や文化の成り立ちを理解する上で欠くことのできない国民共有の貴重な歴史的財産であり、将来の文化の向上・発展の基礎をなすものである。したがって、開発事業との円滑な調整を図りつつ埋蔵文化財を適切に保護することは重要な行政的課題であり、これに対し適切に対応する必要がある。
 埋蔵文化財発掘調査体制等の整備充実に関する調査研究委員会(以下「委員会」という。)は、埋蔵文化財の適切な保護と開発事業との円滑な調整の推進を図る上で行政上必要とされる基本的な方向を検討することを目的として、平成6年10月に設置された。検討に当たって、各地方公共団体等における実態を踏まえ、より審議を深めるために、都道府県・市町村の教育委員会及びその関係機関の実務担当者からなる協力者会議が併せて設置されている。
 委員会でこれまで検討してきた事項については、『埋蔵文化財保護体制の整備充実について』(平成7年12月)『出土品の取扱いについて』(平成9年2月)及び『埋蔵文化財の把握から開発事前の発掘調査に至るまでの取扱いについて』(平成10年6月)として報告したところであり、これらの報告を踏まえた文化庁の通知等により、各地方公共団体において所要の施策の実施が図られてきているところである。
 このたびの検討課題は埋蔵文化財の本発掘調査にかかる経費と期間の積算についてである。
 埋蔵文化財保護行政の推進については開発事業者をはじめとする国民の理解と協力を縛ることが不可欠であり、そのためには行政の各段階における判断や措置は、客覿的・合理的な標唯に基づいて行われる必要がある。このことは、発掘調査に関して特に大きな問題となる発掘調査に要する経費と期間の積算についても同じであることから、委員会では、本発掘調査の経費と期間の積算標準の策定を中心とした課題について検討することとし、委員会を5回、協力者会議を9回開催して検討を重ねてきた。検討に当たっては、協力者会議による実務的な検討を踏まえることはもとより、各地方公共団体における実態を把握し、その分析結果をもとに適正な方法を導き出すようこころがけた。
 本委員会としては、この調査研究結果を発掘調査経費の積算標準のあり方として提言するものであり、今後、文化庁及び各地方公共団体において、これを踏まえ施策を進め、埋蔵文化財保護の推進を図るよう期待するものである。最後に、発掘調査の歩掛等の実態調査において多大な御協力をいただいた協力者及び関係地方公共団体等に感謝申し上げる。

第1章 発掘調査に関する積算標準についての現状と課題

 埋蔵文化財のうち開発事業との調整の結果、現状で保存を図ることができないものについては、発掘調査を行ってその内容を記録にとどめるものとされている。この記録保存のための発掘調査(以下「本発掘調査」という。)は、埋蔵文化財の保護上必要な行政上の措置であるとともに、通常、当該調査の原因となった開発事業者に負担を求めて行われるものであり、そのために必要な経費及び期間は、文化財行政として適切な範囲のものでなければならない。そして、本発掘調査の経費と期間を適切に算定するためには、まず、その算定に関する客観的・合理的な標準がなければならない。
 現在、本発掘調査の経費積算の標準は、全同共通のものはないが、すでに全国7地方ブロックすべてでそれぞれのブロック内に共通の内容のものが策定されている。しかし、各地方ブロックで策定された標準は、必ずしも十分に活用されていない実状も指摘されている(平成7年11月総務庁行政監察局の「芸術文化の振興に関する行政監察」)ため、その現状を把握・分析し、全国的に広く適用できる実用的で合理的な標準を策定する必要がある。
 本発掘調査は、現地の発掘作業だけではなく、出土品や記録類の整理作業とこれらの成果をまとめた報告書の作成・公刊をもつて完了するものであることから、経費及び期間積算の標準はそれら一連の作業について必要であり、かつ、その検討に際しては、それらの各作業ごとに、各地方における実態を踏まえ、実用的で合理的なものとするよう努めなければならない。

1 積算標準の現状と課題

(1)これまでの経緯
 昭和40年、日本住宅公団と文化財保護委員会(現文化庁)との間で覚書が交わされ、公団による住宅開発に伴って必要となった発掘調査の経費の公団負担(いわゆる「原因者負担」)と負担する経費の範囲等の原則が示された。以後、この内容を基本として、日本鉄道建設公団(昭和41年)日本国有鉄道(昭和42年)日本道路公団(昭和42年)建設省(昭和46年)等との間でも同様の内容が覚書等として確認され、この原則が民間事業を含めて全国的に定着していった。
 この原則に従った具体的な発掘調査経費の算出については、各地域や各地方公共団体ごとに独白の積算方法がとられていたが、大型の開発事業の展開により発掘調査が各地で急速に増加していた昭和五57年に、関東甲信越静ブロック内で、事業者から、同じ内容の発掘調査であるのに都県間で発掘調査費の額に差異があるのではないかとの指摘がなされ、ブロック共通の積算標準の検討が開始された。
 文化庁では、こうした動向を背景に発掘調査経費の積算標準の必要性を認識し、開発事業に伴う発掘調査の実施等の指示を実質上都道府県が行っていること、遺跡のあり方には地域性があること等から、この標準は地方単位で共通の内容をもったものとして策定するのが適切であるとし、昭和60年12月の文化庁次長通知「埋蔵文化財の保護と発掘調査の円滑化」において、各地方ブロックごとに標準的な積算基礎を定めて算出するよう通知した。昭和61年10月には、関東甲信越静ブロックにおいて、発掘作業と整理作業の内容に応じた作業歩掛等を、示した標準が策定された。これは、発掘調査の本格的な積算標準としては全国で初めてのものである。この後現在までに全国7地方ブロック(束北・北海道、関東甲信越静、東海、北陸、近畿、中・四国、九州)すべてにおいてそれぞれの区域内に共通の積算標準が策定され、一部ではこれらを基礎にした都道府県の基準も策定されて、地域や担当者間に生じがちな積算の方法とその結果の差異が解消される等の一定の成果が得られている。
 以下にこの積算標準の具体的内容とその問題点を検討する。

(2)発掘作業についての積算標準の現状と課題
 本発掘調査における現場の発掘調査作業(以下「発掘作業」という。)に必要となる経費と期問の積算においては、個別の遺跡の内容を事前に把握することが前提となる。調査歴のない遺跡については、あらかじめ詳細な内容について把握することは困難であるが、本発掘調査の前に的確な確認調査を行うことにより、積算の前提となる遺跡の内容の概要を把握することは可能である(平成10年6月本委員会報告『埋蔵文化財の把握から開発事前の発掘調査に至るまでの取扱いについて」参照)。
 これまでの積算標準は、各地方ブロックごとに細部は異なるが、発掘作業は土を掘り上げる作業で、その中心は人力による掘削であることから、それに要する作業員の数を発掘作業量の基礎とするという基本的な考え方は共通している。この考え方に基づく積算標準の原則は、表土・包含層・遺構焼土(覆土)ごとに発掘対象の土量を算出し、それぞれに設定された作業員の歩掛(作業員一人が一日で掘ることのできる標準の土量)で除して、発掘に要する延べ作業員数を算出するというものである。発掘作業期問は、総作業量に対して一日に投入される調査員・作業員の人員編成に基づいて算出する。各工程の歩掛は各地域の実績をもとに算定されており、多様な遺跡での実例を踏まえ幅のある数値が設定されている。
 この方式は、個別の遺跡の内容や発棚作業の人員編成に応じて適用できるものであるが、次のような問題点も指摘されている。
 まず、設定されている歩掛の幅が大きい点である。歩掛の幅のうちのどの数値を選択するかによって積算の結果に大きな差が生じることとなるが、その数値を選択した理由が明確でなければ積算が恣意的に行われているという印象を与えることになる。歩掛に幅を設けているのは、多様な遺跡の内容や調査の条件に応じて歩掛の数値が異なるからであるが、遺跡の立地、土質、時代・時期、遺構面までの深度、遺構・遺物の数量等に対応する発掘調査の作業はとの具体的な相関関係については、これまでの各地域における発掘調査の実績を分析することにより整理することが可能な段階にきていると考えられる。したがって、遺跡の内谷に応じて適切な歩掛の数他を選択できるよう歩掛の数値及びその条件を、実績を踏まえて定めることが適当である。
 次に、積算標準の適用対象をどのような種類の開発事業を原因とする調査としているかという点である。地方ブロックの標準は、都道府県が実施する本発掘調査で、建設省や道路公団等の公共事業を原因とするものに限定して適用することとしているものが一般的であり、市町村が実施することの多い民間の事業を原因とする本発掘調査については適用していないところが多い。積算の標準は、どのような開発事業を原因とする本発掘調査であるかを問わず広く適用できるものでなければならない。
 また、地方公共団体によっては、過去の実績をもとにした独白の基準があり、地方ブロックが策定した基準を用いていないところがある。このような独自の基準は、全国的な視野の中で客観的に位置付けられているものではなく、他の地方公共団体との対比において合理性のあるものとして理解を得ることが難しい。
 以上の点から、積算標準は、一定の内容、条件下の遺跡の調査であれば調査機関や原因者がいずれであるかを問わず一定の期間と経費が算出されるものであることが必要である。また、全国に共通して汎用できるもので、現実の多様な遺跡の内容や調査体制に対応できるものでなければならないと考えられる。

(3)整理作業等についての積算標準の現状と課題
 現在、出土品等の整理作業から報告害作成まで(以下「整理作業等」という。)に関する積算の標準を定めているところは少なく、地域や地方公共団体ごとに個別に対応している場合が多い。地方ブロックの標準においても整理作業等についての積算標準を定めている例は少ない。
 地方ブロックの積算標準における整理作業等の標準には、現状では2つの方式がある。1つの方式は、発掘調査の場合と同様、水洗・注記・実測等の各工程ごとに作業歩掛を設けて、それに要する調査員・作業員数等を算出し、それらを積み上げていく方式である。この方式の問題点は、遺物の出土量が把握できない発掘作業前や、整理の各作業ごと等の対象となる遺物を選択する基準がない場合においては積算が困難なことである。
 もう1つの方式は、整理作業等に要する期間を発掘作業に要した期間と同期間とし、遺物・遺構等の出土や内容に応じて整理作業等に要する作業員の想定数を増減させるというものである。この方式は、整理作業等の作業量(以下「整理等作業量」という。)は発掘作業量にある程度応じて決まるものであるという考え方によるもので、整理作業等の期間は必然的に定まるが、発掘作業時の体制や必要な整理作業等の総作業量にかかわらず発掘作業の期間がそのまま整理作業等の期間とされている点で合理的ではないという問題がある。また、遺物・遺構等の内容に応じた作業員数の標準の幅がかなり大きく、その中の数値の選択が恣意的になりがちだという問題もある。
 整理作業等についての積算標準例が少ない理由としては、整理作業等について積算標準は発掘作業の積算標準と比べて難しい要素があることが考えられる。
 発掘作業の場合に比べて整理作業等についての積算標準の策定を難しくしている第1の要素は、出土遺物の種別や時代によって作業量が複雑に変動することである。発掘作業は時代や遺跡の種別が異なっても遺物を取り上げながら土を掘るという作業においては同じであり、それによって作業量は大きく変動しない。これに対して、整理作業等の対象である出土遺物は、例えば、石器と土器の違いや複雑な文様をもつ縄文上器と須恵器のように、種別や時代、種類、器種等によって実測等の作業量が変動するのが一般的である。第2の要素としては、作業の対象が一定しないことが挙げられる。発掘作業は、基本的に遺物包含層や遺構のすべてを掘るものであるのに対し、整理作業等は洗浄・注記等の作業工程を除くと、すべての遺物を対象とするのではなく報告書に掲載するものを中心に選択して作業を行うものである。そのため出土遺物全体の中から選択されるものの割合に応じて作業量が変動することになる。
 以上のことから、整理作業等の積算標準を策定するためには、前提として多種多様な作業歩掛の設定と整理対象とするものの選択基準を含むきめ細かい作業標準を定めなければならないことになる。
 報告書については、記載する必要のある事項とその量は、発掘された遺跡の内容に応じて適切なものであることが求められ、かつ印刷製本費の算出の必要性からも報告書の内容と分量についての標準が必要であるが、これらについての標準は、従来策定されている積算標準の中にも含まれている例がない。

2 標準策定のための検討方針と改善方策
 本発掘調査の経費と期間を算定するための積算標準は、埋蔵文化財保護行政において不可欠のものである。一定の性格・立地・内容等の遺跡で一定の条件下での本発掘調査であれば、調査機関や調査の原因となった事業の種別を問わず一定の経費と期間が算定されるように、全国共通の積算標準を策定する必要がある。このような標準の策定に際しては、これまでに策定されている地方ブロックの標準を参考にすることが有効である。積算標準を策定するに当たっては、その前提として発掘作業及び整理作業等の内容に関する標準を定めておくことが必要である(第2章関係)。
 発掘作業については、発掘作業量が遺跡の立地、土質、遺物・遺構の内容等により変化するものであり、こうした多様な遺跡の内容に応じて適切な作業量を積算することができるような方法の検討が必要である。また、歩掛の数値は、現在全国で行われている実態を踏まえて適切に定めることが適当であり、実態調査を行いその結果を分析する必要がある(第3章1関係)。
 整理作業等については、現状では積算標準の事例が少なく、積算の実践の積み重ねが不足しており、発掘作業と同じ精度の標準を策定することは容易ではない。しかしながら、実際に整理作業等に関する経費の積算は必要であり、地域の実績に基づいた積み上げ方式等による積算標準がない場合において参考となる一定の目安が求められていることから、現時点における基本的な考え方を整理し、実態調査に基づいた歩掛を目安として示す必要がある(策3章2関係)。
 以上のことから、この調査研究委員会では、現在の地方ブロックの積算標準に関して指摘されている課題に対応するため、第2章以下に全国共通の積算標準を示すこととした。一方、遺跡のあり方には地域性があり、各地域の実態に即していて適用しやすい基準をつくることがより有効で合理的であることから、ここで示す積算標準を参考にして、各都道府県ごとに地域の実績を踏まえて積算基準を策定し、個別の事業に対応して活用することとすることが適当である。

第2章 本発掘調査の作業内容の標準

 埋蔵文化財包蔵地において開発事業が行われる場合の当該埋蔵文化財の保護と開発事業の調整及び埋蔵文化財の取扱いに関する総体的な仕事の流れは、事前協議、本発掘調査、記録類・出土品の収納保管となっており、その工程の概要は、別紙11に示すとおりである。この工程において開発事業者に負担を求める経費の積算が関係するのは、「本発掘調査」の部分である。
 本発掘調査は、埋蔵文化財保護の行政的手法の一つであるいわゆる記録保存の措置として、開発事業により失われる遺跡の範囲について、遺構・遺物の内容及び所在状況の記録を作成するものであるから、そのための発掘作業や整理作業等は一定の水準を保って行われ、記録には必要な事項が的確に記載されていなければならない。
 このことから、本発掘調査に要する費用について標準を策定する場合には、まず、本発掘調査を構成する各作業の内容・精度について保たれなければならない一定の水準を明らかにし、その上で、その各々の作業に要する経費の計算の方法に関する通則的な考え方あるいは一定の数値基準を定めていく必要がある。
 埋蔵文化財の本発掘調査は、現地での発掘作業と、室内における出土品や記録類の整理作業及び報告書作成からなり、それらはさらに細分化された一連の作業で構成されているので、以下、これらについての内容及び精度の標準とそれに要する経費を積算する場合の標準となる考え方や数値の標準を示すものとする。

1 発掘作業及び整理作業等の内容に関する標準

(1)発掘作業
 本発掘調査として行われる一連の作業は、調査の対象となる遺跡の種類ごとに異なるものであるから、本発掘調査として保つ必要のある一定の水準を想定し、標準を定める際にも、本来は、各種類の遺跡ごとにその検討を行う必要がある。ここでは、遺跡の種類のうち最も普遍的に存在し、そのため発掘調査の対象となる機会が最も多い集落遺跡を対象とし、これを記録保存の目的で発掘調査する場合に必要となる各段階ごとの作業を想定して、それぞれの内容と精度の標準を示すこととする。もとより、各種の遺跡のなかには、調査の内容や重点とすべき調査事項において集落遺跡を想定した標準を適用することが適切でない種類のものもある。したがって、適切な積算のためには、集落遺跡以外のいくつかの典型的な種類の遺跡の調査を想定した同様の標準を各地域において実績を踏まえて作成しておくことが望ましい。また、調査の内容や各作業の具体的仕様については、調査や記録作成の技術等の進歩・改善に対応するよう適宜見直しを行う必要がある。ある程度の規模を有する集落遺跡の本発掘調査を前提として、その全工程を各作業段階ごとに示すと次のとおりである。各作業のさらに詳細な内容及び留意事項は、別紙2−1に示すとおりである。

1)事前準備
(ア)事務所設置・器材搬入等
 発掘調査を安全かつ円滑に実施するために必要な作業拠点の設置、進入路の設置、矢板工事の実施等である。
(イ)発掘前段階作業(対象地の伐採・測量基準点等設置・地形測量)
 実際に掘削作業に入る直前に行う作業である。本発掘調査を行う範囲における準備(伐採・本発掘調査前の現況の記録・調査範囲の縄張り・柵囲い等)、基準点・水準点の設営等である。利用できる既存の地形図がないときは、新たに地形測量を必要とする場合もある。

2)発掘・掘削作業
(ア)表土等掘削作業表土層や遺物包含層までの無遺物層を掘削する作業である。土木機械を使えない場合に人力によることもあるが、今日では、バックホー等の機械による掘削作業が一般化している。なお、進入路の確保等調査対象地の条件によっては、機械力を導入できない場合もあることから、機械力を導入するか否かは、それぞれの条件に従ってより効率的、経済的な方を選択することになる。
(イ)遺物包含層の掘削作業遺構の上層に形成されている遺物包含層を掘削する作業である。遺物包含層には、人為的に残された遺物が、その後の土壌作用によりおおむね原位置に近い範囲に広がって所在しているものであり、これらの遺物は、遺構内の出土遺物とともに重要な資料である。したがって、遺構面までの層序を確認しながら上層から層位ごとに掘り進め、出土遺物については、遺跡の内容や遺物の出土状況に応じて適切な地区割りを行い、その単位ごとに取り上げることを基本とし、必要な場合には厳密な出土位置を記録する。
(ウ)遺構検出作業
 遺構面に達し、竪穴住居跡や土坑等土地に掘り込まれた遺構の輪郭を確かめる作業である。これらの遺構は、遺物のように誰にでも存在がわかるというものと異なるので、この段階で調査員の目によって識別されなければ、存在が認識されないまま掘削されてしまい、後から再確認することもできなくなってしまうから、注意を要する重要な段階である。遺構面の精査による遺構検出作業によって、遺構の分布状況を把握するとともに、その平面形態・配置・重複関係・埋土(覆土)の状況から、柱穴や土坑等個々の遺構の性格、形成順序や帰属時期を推定し、次の段階で各遺構を発掘していく方法や順序の計画を立てる必要がある。この段階で簡略な遺構配置図を作成しておくことが望ましい。
(エ)遺構掘削作業
 平面として所在を確認した各遺構内部の土を掘り下げていく作業である。遺物の出土状況を含めて遺構内の埋土中に、その遺構の性格や形成時期、使用期間あるいは廃棄されて埋没する過程までの様々な情報が含まれており、そこから情報を引き出すこの作業は本発掘作業のなかで根幹となるものである。遺構掘削作業の具体的な方法については、普遍的な遺構として竪穴住居跡を例に示した(別紙2−2)。通常の発掘のほか、整地層等や石敷面等何らかの人為的な面の下層の掘り下げや、断ち割りによる現在の掘り下げ面の妥当性の確認、葺石や石組み溝等の遺構についての構造や構築順序等の確認、盛土遺構の掘り下げ等、必要な補足調査を行う。遺構中に含まれる遺物については、性格を判断しながら、それに応じた記録をとって取り上げ、必要に応じて花粉分析等のための土壌サンプルの採取等も行う。
(オ)図面作成・写真撮影作業
 各遺構の掘り下げにより同じ遺構面にある一定単位の遺構群が検出された段階で行われる図面や写真撮影による記録作業であり、記録保存措置として重要な工程である。図面は、統一した縮尺による遺構群全体の平面図とともに、人為的に置かれた遺物等の出土状況を示す詳細図、構造物の立面図等、遺構の特質に応じて記録として必要なものを作成する。写真も遺跡及び調査区に応じた撮影計画をたて、主要な個々の遺構、遺物の出土状況とともに、一定単位の区画ごとの、あるいは全景の写真撮影等が必要である。具体的な記録すべき内容とその成果品については、別紙2−2(2)に竪穴住居跡を例に示した。
(カ)埋め戻し・現地撤収図面作成・写真撮影が終了した段階で、必要な場合は埋め戻しを行い、現地での一連の作業が完了すると、発掘器材の搬出や設営した設備の撤去、出土遺物や記録類等の搬出を行い、事業者側に現場の引き渡しを行う。

(2)整理作業等
1)記録類と出土品の整理作業(別紙3−(1)、(2)
(ア)記録類の整理
 発掘調査後すみやかに図面・写真・調査日誌その他メモ類等の記録類の整理を行う必要がある。これらは現地作業中に点検し必要な注記や所見を整理しておく必要があることは言うまでもないが、調査終了後、まだ調査所見が明確に記憶されている段階で、これら一次資料についての総括的な点検を行い記録として整理、完成させておく。
 以上の作業を行った上で遺構の図面や写真をもとに、各遺構ごとの基礎データを整理しておく。必要に応じて遺構の台帳を作成するとともに、集合図の作成あるいは各図面相互の整合性の確認等を行う。
(イ)出土品の整理(洗浄・注記・接合)
 出土品は、出土位置・層位・遺構番号・出土年月日等を記入したラベルが付され、取り上げた単位ごとに袋詰めされている。こうした出土位置等の情報は出土品を評価する上で欠くことのできないものであり、水洗等を行った上で、出土品に直接必要事項を記入する。この段階で出土品の全体に目を通し、その概要を把握しておき、遺物の種類や出土地点等による分別等を行い、本格的な出土品整理を実施しやすいように工夫しておくことが望ましい。
 以下、@出土品の接合・復元、A必要なものの保存処理等、B土器の胎土分析や年代測定等各種の分析・鑑定のための試料採取及び分析等の作業が必要となる。
 以上の作業を行った上で、上記(ア)で整理された記録類とともに、遺構・遺物の写真・図面の体系的な整理を行い、発掘調査した遺跡の記録を将来にわたり保存し、活用できるように収納し、保管する。

2)報告書作成作業(別紙3(3)
 調査結果の評価・対象遺跡の意味づけの検討ここまでの段階で資料化され検討を加えられた遺構と出土品のデータ、理化学的分析の結果等を総合的に検討し、発掘調査報告書に掲載するか否か、掲載する場合の程度等を検討する。そして遺構の時期判断、同一時期の遺構の抽出、当該の遺跡がたどった歴史的変遷を明らかにし、調査における成果をまとめる。
(イ)出土品の図化・写真撮影
 接合作業等が終わった出土品の分類を行うとともに、個々の資料に応じた図面や写真等の必要性を判断した上で、実測による図化・製図(トレース)や写真撮影を行う。さらに、整理された遺構等の記録類をもとに、出土した遺物の分析・検討を行う。
(ウ)報告書作成(原稿執筆・遺構・遺物の写真・図面の版下作成.報告書の体裁の調整)
 発掘成果を報告書にとりまとめる作業である。文章の執筆、挿図・図版等の製図、版組みを行う。報告書の割付を行い、最終的に文字原稿・図原稿を整えて印刷に入る。全体としては簡潔に記述し、特筆できる成果のあったものは詳述する等の工夫をして、発掘調査で明らかになった事柄の要点を整理しまとめる。

2 経費積算の標準と積算の実施
 以上が、集落遺跡を想定した場合の本発掘調査として行うべき典型的な作業工程である。各作業工程において必要となる人員、施設、器材等については、別紙4に示すとおり多様なものがある。具体的な本発掘調査に関して積算する際には、上記のうちから当該の本発掘調査に必要となる作業項目や施設、器材等を抽出し、それぞれに適した費目(別紙5参照)を選択することとなる。このうち積算の基礎であり経費としても主要な部分となるのは作業員に係る経費であり、その積算標準は第3章において示すこととする。本発掘調査費の内容は、調査に要する直接的な費用である調査費が最も基本となるものである。この他に発掘調査を指揮監督する調査員の人件費が必要となる。また、発掘調査を実施する調査組織の運営・管理等を行うための事務的経費も必要となる。したがって、調査経費の組立は、別紙5に示すように調査経費と事務的経費とに分け、調査経費については調査費と調査員人件費とに分けるのが適当である。
 調査経費の積算に用いられる各種の単価については、地方公共団体や建設省等で定めている各種の基準や地域の実績を踏まえて基準を定めることとし、現場事務所の設置仕様等については、発掘現場の環境・期間や地域の実績に応じた基準を定めることが望ましい。なお、埋蔵文化財の活用のための展示等に関する費用や研究紀要、広報冊子等の刊行などは、原則として別途措置すべきものである。

第3章 本発掘調査費の積算標準

 本発掘調査に要する経費は、本発掘調査に要する作業量の多寡によるが、これは発掘対象となる土の量のほかに、その遺跡の遺構面の数や遺構・遺物の量や内容等によって変動する。したがって経費の積算上もっとも大きな課題は、発掘作業から整理作業及び報告書作成までの作業量をいかに遺跡のもつ内容に即して適正に見積もることができるかという点にある。この作業は発掘作業・整理作業等とともに機械化が可能な分野もあるが基本的には人手によるものであるので、その作業量は延べ調査員数と延べ作業員数と言い換えることができる。これが本発掘調査経費を積算する際の基本となる。本章では、発掘作業と整理作業等に分けて、作業員が行う作業量を客観的に算出するための基本的な考え方と方法を示す。

1 発掘作業の積算標準

(1)作業量算出方法の基本的な考え力
 発掘作業において作業員が行う作業には、@発掘、A記録(測量、写真撮影)、Bその他(諸作業)がある。これらのうち作業量の基礎になるのが@である。@の発掘作業員による人力発掘作業に係る作業量については、土を掘削するという性格から、発掘対象となる土量を、作業員の「歩掛」の数値で除すことにより算出する方法が合理的である。これは、建設省作成の「土木工事標準歩掛」における「人力土工」の場合の積算方法と同じであり、全国7地方ブロックで作成されている積算基準も基本的にはこの方式によっている。しかし、遺跡の人力発掘作業は遺構や遺物に注意しながら掘り進める必要があるので、単調な掘削作業である土木工事における「人力土工」の作業とは異なり、遺跡の内容によって作業能率は変動する。したがって、歩掛の数値を単純な定数とすることは不適当であり、遺跡の内容に応じた適切な数値を設定する必要がある。そのためには、標準となる歩掛(標準歩掛)を定めるとともに、歩掛に影響を及ぼす要素を補正項目として設定し、その補正項目の内容、程度に応じた補正係数を定めることが必要である。その上で各遺跡の内容に応じて各項目ごとに補正を行い、当該遺跡での歩掛を決定する方式とすることが合理的である。計算式を示すと次のとおりである。
 延べ人力発掘作業員数[人・日]=発掘対象土量[立方メートル]÷(標準歩掛×補正係数)[立方メートル/人・日]

(2)標準歩掛設定の区分人力
 発掘作業においては、@表土等の掘削(以下「表土掘削」という。)、A遺物包含層の掘削(以下「包含層掘削」という。)、B遺構検出、C遺構埋土の掘削(以下「遺構掘削」という。)の4工程がある。それぞれ、@基本的に遺物に注意する必要のない表土及び無遺物層の掘削、A遺物を取り上げながら、かつ、土層の変化に注意しながら進める遺物包含層の掘削、B遺構面を精査し掘り込まれた遺構等を探す遺構検出、C検出した遺構内部を土層や遺物に留意しながら慎重に掘り進める遺構埋土(覆土)の掘削というように、内容の異なる作業であることから、各工程ごとに標準歩掛を設定する必要がある。
 標準歩掛の設定に当たっては、遺跡の立地ごとに数値を定める必要がある。例えば、平坦な地形であっても、低湿地においては、堆積作用が大きく遺構面が深い上に地下水位が高くて常時排水を必要とする場合が多く、そうではない平地に比べて発掘作業の能率がかなり下がる。一方、台地上の場合は湧水のない平坦な地形であり調査を遂行する上での制約は少なく、また遺構面が浅ければ作業の能率は一層高くなる。このように、遺跡の立地は作業の能率すなわち歩掛に大きな影響を与えるものであり、また、その差は徐々に変化する性質のものではないため、係数により補正を加える要素として扱うことは適当ではない。そこで、遺跡の立地を台地・平地・低湿地・丘陵等と区分し、それぞれに標準歩掛を設定する必要がある。

(3)補正項目とすべき要素
 人力発掘作業の歩掛に影響を及ぼすと考えられる要素には次のようなものがある。
《全体に関係する要素》
(ア)調査条件 調査面積が小さい場合や調査区の形状が狭長である等の場合、市街地内である等周辺の環境による制約がある場合、排土条件が悪い場合、真夏の猛暑時期や梅雨期等季節・気候の条件が悪い場合は、歩掛が下がると考えられる。
《各作業工程ごとに関係する要素》
(イ)土質 砂質土や粘質土等の土の性質、礫等の混入や含水の程度や硬さ等の、掘削対象の土質は、包含層掘削や遺構掘削の工程の歩掛に影響を及ぼすと考えられる。
(ウ)遺物の内容(質・量) 遺物の種類や多寡あるいは保存状態等は、包含層掘削や遺構掘削の工程において歩掛に影響を及ぼすと考えられる。
(エ)遺構密度 遺構検出に当たっては、遺構密度の程度が、直接的に歩掛に影響を及ぼすと考えられる。
(オ)遺構識別難易度 遺構検出に当たっては、遺構の密度とは別に、遺構検出面が自然面か人為的な面であるか等の遺構埋土と遺構周囲の土壌との識別の難易度が歩掛に影響を及ぼすと考えられる。また、遺構が重複している場合についても、切り合い関係の判断が必要となるため、遺構検出の工程の歩掛に影響を及ぼすと考えられる。
(カ)遺構の内容(頁・量) 遺構埋土の掘削に当たっては、遺構の種類や数、重複の程度、石敷その他の構造物の有無等、遺構の内容が歩掛に影響を及ぼすと考えられる。

(4)標準歩掛と補正係数の実態調査とその設定数値
 標準歩掛と補正係数を設定する場合、その数値は実際に行われている本発掘調査の実績を踏まえて定めるのが最も適切であると考えられるので、全国の地方公共団体等が行う本発掘調査を対象として実態調査を行った。実態調査は、まず平成10年度に全国の地方公共団体等がおおむね過去5年間に実施した調査事例を対象にして行い、立地や土質・遺物・遺構等の遺跡の条件等についての全体の傾向を把握した。その上で、個別の遺跡の内容に応じた歩掛の実態を詳細に把握することを目的として、標準歩掛と補正項目と係数を適切に設定できるように、あらかじめ調査条件を設定して、平成11年度上半期に全国の地方公共団体等が行った発掘調査について実態調査を行い、193件の事例を集成した。これらのデータをもとにして標準歩掛の数値と補正項目及びその係数について分析を行った(参考資料III−1)。
 ここで示す標準歩掛は、遺物の取上げや排土作業及び朝夕のシート掛けや準備・片づけ等、通常の発掘作業に付帯するものを含めた作業量としての数値であり、歩掛算定の単位となる発掘作業員は、土木建設作業における普通作業員ではなく、通常発掘作業に従事している臨時雇用等の作業員である。また、1日の実働作業時間を昼休みの時間を除いた6.5時問としている。以上のことを前提に、実態調査結果の検討により、各作業工程ごとの標準歩掛(単位:立方メートル/人・日、以下「立方メートル」とする。)と補正係数の数値を以下のように定めることができる。なお、表土掘削の工程及び丘陵・低湿地の立地条件における場合については、十分なデータが得られなかったので、ここでは標準歩掛と補正係数は設定できなかった。
 なお、実態調査の対象としたのは所在数が最も多い集落遺跡である。平成10年度に実施された全国の発掘調査の届出等により調査対象となった遺跡の種別をみると、集落遺跡とその可能性が高い遺物散布地を合わせると全体の約7割に及ぶ。また、集落遺跡と同じく土坑等の掘り込まれた遺構を主体とする城館跡や官衙跡等遺構の内容が集落遺跡と類似している遺跡を加えると、ここで示す集落遺跡の調査実績に基づいた標準は全国の8割程度の調査に適用できると考えられる。

標準歩掛と補正係数
(ア)包含層掘削
 遺物包含層は遺構面上に形成された土層であり、そのあり方には、遺物の出土量が比較的希薄で大型の用具(スコップやクワ等)で掘削できる場合と多数の遺物が包含されており小型の用具(移植ゴテや小型クワ等)で丁寧に掘削しなければならない場合とに分けられる(前者を「包含層掘削I」、後者を「包含層掘削II」と区別することとする。)。包含層掘削Iの標準歩掛は、台地の場合は0.9立方メートル、平地の場合は0.8立方メートル、包含層掘削IIの標準歩掛は、台地の場合は0.7立方メートル、平地の場合は0.5立方メートルとするのが適当である。
 補正項目としては土質と遺物の内容の2つの要素が関係する。包含層掘削Iの補正係数は、土質が通常のものに比べて堅い等で作業が進めにくい場合のみ0.8から0.9、遺物の内容が多量・複雑等で作業が進めにくい場合は0.9、少量・単純等で作業が進めやすい場合は1.1とするのが適当である。包含層掘削IIの補正係数は、土質により作業が進めにくい場合は0.9、土質により作業が進めやすい場合は1.1、遺物の内容が多量.複雑等で作業が進めにくい場合のみ0.7から0.9の範囲とするのが適当である。
(イ)遺構検出
 遺構検出は遺構面において数センチメートル程度の厚さを削る作業である。その対象となる土量は少なく、作業員による掘削作業そのものよりも、調査員が遺構を注意深く識別する作業に多くの労力を費やすものであり、土壌条件による遺構の識別の難易度が大きく影響する。標準歩掛は台地の場合はO.7立方メートル、平地の場合は0.5立方メートルとするのが適当である。
 補正項目としては、遺構密度と遺構識別難易度の2つの要素が関係する。補正係数は、遺構密度が濃密の場合のみその程度により0.7から0.9の範囲とし、遺構識別難易度において、難しい場合はその程度により0.6から0.9の範囲、容易な場合はその程度により1.1から1.4の範囲とするのが適当である。
(ウ)遺構掘削
 標準歩掛は台地、平地いずれの場合とも0.4立方メートルとするのが適当である。この数値は、竪穴住居跡や掘立柱建物跡あるいは土坑等の一般的な遺構を想定したものであり、大溝等の体積が大きな遺構で遺物が少ない場合については、その内容に応じて包含層掘削1の歩掛を当てる等の対応も考えられる。逆に小規模な土坑が主体の場合は土量に比べて手間がかかることを考慮する必要がある。補正項目としては、土質、遺構の内容、遺物の内容の3つの要素が関係する。補正係数は、土質により作業が進めにくい場合は0.9、上質により作業が進めやすい場合は1.1、遺構の内容が多量・複雑等で作業が進めにくい場合はその程度により0.8から0.9、少量・単純等で作業が進めやすい場合はその程度により1.1から1.2、遺物の内容が多量・複雑等で作業が進めにくい場合は0.9、少量・単純等で作業が進めやすい場合は1.1とするのが適当である。
(エ)全工程に関係する補正項目
 全工程に関係する補正項目として、調査条件がある。これについては不良の場合のみ影響がみられ、補正係数は0.9とするのが適当である。

(5)記録作成作業と諸作業の作業量算出
 記録作成作業には、測量(遺構実測)と写真撮影作業がある。
 測量は、写真測量もかなり普及しているが、ここでは人手による測量を行う場合とする。また、主に調査員及び調査補助員が行う場合と主に発掘作業員が行う場合とがあるが、ここでは主に発掘作業員が行う場合とする。写真撮影作業は、写真撮影に伴う遺構や調査区内の清掃作業や足場設営等、作業員が行う作業である。
 これら記録作成の作業量は、検出し掘り上げた遺構の数量等に即して積み上げて算出することも考えられるが、遺構の内容やあり方はきわめて多様であり、算出方式を単純化して合理的に定めることはかなり困難である。実際には、検出される遺構の内容に応じて、遺構掘削に要する作業量が増減し、これに応じて記録作成の作業量も変動することから、両者の作業量は相関すると考えられる。したがって、記録作成の作業量は、遺構検出及び遺構掘削の作業量に一定の比率を乗じて算出するのが適当である。
 実態調査によれば、測量に要する作業員数は発掘に要する作業員数の40%までの事例が多く、平均値は17%となっている。一般的な場合は発掘作業員数の10−15%程度が適当であり、遺構の内容によっては発掘作業員数の20−40%となる場合を考慮しておくことが必要である。写真撮影に要する作業員数は、発掘に要する作業員数のほぼ5−25%であり、平均は21%となっている。一般的な場合は10−15%程度が適当である。なお、包含層掘削のうち包含層掘削一IIを適用する作業においては遺物の出土状況等の記録作成が必要となる場合があり、これについても記録作業の対象とする必要がある。
 諸作業は、人力掘削作業と記録作成作業のほかに、発掘の準備作業や撤収作業、雨後の排水作業、現場管理に関わる足場や囲柵の設置等の労務作業等、発掘調査において必要となる様々な作業すべてを含むものである。このような作業は、発掘作業を遂行する上で生じる付帯的な作業という性格をもつので、想定される作業を積み上げる方法よりも、作業員による人力発掘作業と記録作成作業を合わせた作業量(作業員数)に、一定の比率を掛けて作業量を算出する方法が適当である。
 実態調査によれば、諸作業の作業員数は人力発掘作業と記録作成作業の作業員数のほぼ30%以内であり、そのうちの大半は10%までで、平均は17%となっている。したがって、一般的な場合は人力発掘作業と記録作業に要した作業員数の合計の5−10%程度とすることが適当である。

(6)延べ調査員数と発掘作業期間の算出
 延べ調査員数と発掘作業期問は、本発掘調査の規模や諸条件に応じて必要とされる作業量から調査員と作業員の人員編成を想定し、それを基礎として算出される。本発掘調査を適切に実施するためには、大量の作業員を投入すればよいというものではなく、適切な数の作業員が調査員の指揮監督のもとに誤りなく掘り進めることが必要である。また、調査員は発掘現場の安全管理にも注意を払う必要があることから、1人の調査員が指揮監督できる作業員数には自ずから限界がある。実態調査によれば、この作業員数は10人程度の場合がもっとも多いが、6人から20人の場合もあり、平均は12.5人となっている。したがって、一般的には10人から15人程度を標準とすることが適当である。実際には、発掘面積が小さく、少ない作業員しか投入できない場合があり、逆に調査補助員が雇用できる場合や作業員の熟練度が高い場合は、より多くの作業員を指揮監督することが可能となる。ただしその場合においても、多くても20人程度と考えられる。

(7)都道府県における積算基準の設定と留意事項
 各都道府県においては、以上に示したような積算標準の基本的な考え方、集落遺跡の場合として示した標準歩掛と補正項目及びその係数をもとに、必要な事項を定め、具体的な積算基準を作成する必要がある。その場合、市町村を含めた地域の実績を踏まえた上で、次のような点について留意する必要がある。
(ア)台地、平地以外の遺跡の標準歩掛等の設定
 実態調査では、丘陵・低湿地の場合の標準歩掛を定めるのに十分なデータが得られなかったため、これらについては具体的な数値を示すことができなかった。したがって、これについては各地域の実態や経験によって具体的な数値を設定するとともに、その他の立地の遺跡についても、地域における実績を踏まえて定めることが必要である。
(イ)表土掘削
 表土・無遺物層等の掘削は機械によることあるいは人力と機械を併用することが一般化しているため、実態調査によって人力のみによる場合の標準歩掛を定めることができなかった。これについては、各都道府県で地域の実績を踏まえるか、あるいは建設省作成の「土木工事標準歩掛」の「人力土工」の数値を参考にして、遺跡の発掘調査における条件、例えば一般の発掘作業員が行うこと、樹木の根等の障害があること、調査区の壁削りその他の作業を伴うこと等を考慮して定めることが適当である。
 また、機械を使用する掘削作業については、「土木工事標準歩掛」の「床掘」の数値を参考にして、調査員の立会のもとでの掘削を行う必要のある土層の下部においては特に注意を払いながら作業を行わなければならないことを考慮する必要がある。
(ウ)補正の項目と係数補正項目となる各要素については、前記(4)において示した係数の幅の範囲内において、適切な段階を設定しそれぞれの段階の係数を定める必要がある。段階の設定においては定量的な指標、一定の考え方や目安を明確にし、可能な限り客観性のあるものとしておくことが適当である。その際、地域の特質に応じて、不要な項目を除外したり、複数の項目をまとめる等、補正項目の取捨選択を行うことも考えられる。
(エ)記録作成作業と諸作業の歩掛
 記録作成作業と諸作業について、ここで示した数値を参考に、それぞれの地域における実態を踏まえて定める必要がある。その際、遺構の種類ごとの歩掛を設定し、それぞれを積み上げる方式をとることも考えられる。また、諸作業についても作業量が特定できる作業については、積み上げ方式とすることも考えられる。
(オ)特殊な遺跡の歩掛設定前記(4)において示した標準歩掛は集落遺跡を対象としたが、その他の遺跡でも掘り込まれた遺構を主体とする遺跡についてはこの標準を適用できると考えられる。集落遺跡以外の、旧石器時代の遺跡、貝塚、古墳、窯跡や製鉄遺跡等については、当面、各地域における実績に応じて標準歩掛等を定める必要がある。これらの遺跡も特殊な要素はあるものの調査工程は基本的に同じであるから、実績を踏まえた補正係数を設定する等の工夫により、この標準を活用することは可能と考えられる。
(カ)遺構検出の作業工程の取扱い
 遺構検出については、包含層掘削によってほぼ遺構が判別できる場合や、遺構検出と遺構掘削を一体として実施する場合もある。したがって、この工程を独立させるか包含層掘削あるいは遺構掘削に含めるかは、各地域の実態に応じて定めることが適当である。
(キ)面積を単位とする歩掛既存の地方ブロックの標準のなかには、遺構検出と遺構掘削については面積を単位とする歩掛を設定しているものもある。しかし、遺構の種別や深さ等の多様なあり方を考慮せずに、遺構面積から単純に作業量を求めることは適切ではなく、原則は土量によるべきである。掘り上げる必要のある土量はあらかじめ算定することが困難な点もあるが、遺構の種類をおおまかに分類し、それぞれの平均的な深さから土量を算出し、合算して総土量を見積もることができると考えられる。ただし、遺構のあり方が比較的均質で平均的な深さが設定できる場合は、遺構検出と遺構掘削について土量から換算した上で面積を単位とする歩掛とすることも考えられる。
(ク)遺構掘削の積み上げ方式
 遺構掘削について、遺構の種類ごとの歩掛を設定し、それぞれ作業員数を積み上げる方式も考えられる。ただし、遺構の分類や設定された歩掛を客観性のあるものにしておく必要がある。旧記録作成作業における作業量の調整写真測量を実施する場合は、それについて人力作業量から除く必要があり、断面図等人手の測量によらざるをえない作業の量を定める必要がある。また、測量を調査員や調査補助員によって実施する場合は、それに応じた算定を行う必要がある。

2整理作業等の積算標準

 報告書作成を含む整理作業等の積算方法としては、主として各作業工程ごとに作業量を積み上げる方式と、発掘作業の期間又は作業員数を基礎として整理作業等の期間・作業員数を算出する方法がある。前者の方式については、第1章で述べたように幾つかの問題点があって、この方式による積算標準を策定することは容易ではないことから、ここでは後者の方式に即し、その標準を示すこととする。
 ただ、従来この方式で整理作業等の積算を実際に行っている地域が少ないこと、また整理作業等に関する積算標準自体が、発掘作業の積算標準に比べて実績の積み重ねが不足していることから、今回示す数値は整理作業等に要する総作業量の、当面の目安として適用するのが適当である。
(1)作業量算出方法の基本的な考え方
 整理作業等の大部分は調査員・作業員が直接行う作業であり、その作業量は整理作業等に従事する調査員・作業員の延べ人数によって示すことができる。したがって整理作業等の積算を行うためには、遺跡の内容に応じた適切な調査員・作業員の延べ人数を算出することが必要となる。整理等作業量は、その作業内容からみて一般的に出土した遺構・遺物の数量や内容によって大きく変動するものであり、遺構・遺物の数量が増加すれば整理等作業量はそれに応じて増加する傾向がある。遺構・遺物の数量や内容は、発掘作業における作業員等の延べ人数に反映されることから、発掘作業量と整理等作業量は一定の相関関係にあると考えられる。したがって、整理作業等に要する作業員・調査員数を算出する方法としては、発掘作業に要する作業員数・調査員数を基礎として一定の比率を乗ずる方法が適当と考えられる。発掘作業の場合、作業のほとんどは作業員が実施し、調査員は作業員の指揮監督が主たる業務となる。これに対し、整理作業等では、作業員が行う作業も多いが、報告すべき遺物を選択すること、出土遺物や遺構の検討を行うこと、発掘調査の成果について記述すること等、作業員に委ねることのできない作業がある。また出土遺物の実測については、一定の専門的な知識・技術が必要であることから、他の作業工程にも増して調査員の頻繁な指示とともに入念な成果品の点検を行う必要がある。このように、整理作業等においては、調査員は作業員の指揮監督だけではなく自ら行う作業が一定量を占めていることから、発掘作業の場合のように作業員の延べ人数だけを算出するだけではなく、調査員についても必要な延べ人数を算出することが必要である。
 また、室内で行う整理作業等は現地での発掘作業とは作業の内容が異なり、別の観点から補正が必要となる場合があることから、平均的な場合の歩掛(標準歩掛)を設定するとともに、整理作業等の段階で生じる特有の要素を補正項目とし、それぞれに適正な補正係数を定め、個別の遺跡の整理作業等に関する調査員と作業員の歩掛を算出することが適当である。計算式を示すと次のとおりである。
 延べ整理作業員数[人・日]=延べ発掘作業員数[人・日]×(標準歩掛×補正係数)
 延べ整理調査員数[人・日]=延べ発掘調査員数[人・日]×(標準歩掛×補正係数)

(2)標準歩掛と補正係数の実態調査とその設定数値
 標準歩掛と補正係数は、整理作業等の実態を踏まえたものであることが適当であることから、地方公共団体等が主体となり平成5年度以降に報告書が公刊された発掘調査事例103件を対象にして、発掘作業及び整理作業等に要した調査員・作業員の延べ人数、遺跡の内容や発掘作業の条件等について、実態調査を実施した。実態調査により発掘作業と整理作業等に要した延べ調査員数と延べ作業員数についてそれぞれ検討した結果(参考資料III−2)、整理作業等に要する延べ人数の標準歩掛は、発掘作業に対して、作業員は0.4、調査員は0.7とするのが適当と考えられる。整理作業等において考慮すべき補正項口とその係数は、以下のものが考えられる。}発掘作業期間実態調査によると、発掘作業の期間(実働日数)が60日以下の短い事例においては整理作業等に要する調査員数の比率が高くなる傾向がある。小規模な調査であっても報告書作成のためには一連の作業工程に沿って調査員が行うべき一定の作業量があり、その部分は発掘調査の規模に応じて減らないことによると考えられる。発掘作業期間についての調査員の補正係数は、60日以下31日以上の場合は最大1.5までの範囲、30日以下の場合は最大2.5までの範囲とするのが適当である。
(イ)遺物の出土密度
 実態調査によると、遺物の密度が標準的と考えられる事例(1000立方メートル当たりの出土量が5−30箱一に対して遺物密度の低い事例においては、整理作業等に要する作業員数の比率が低くなり、遺物密度の高い事例はその比率が高くなる傾向が認められた。出土遺物に関する実測・トレース等は整理作業等の中でも最も時間がかかる作業であるため、遺物の出土量が発掘作業に影響する以上に整理作業等を行う作業員数に影響を与えていることによると考えられる。出土遺物の密度についての作業員の補正係数は、遺物密度の低い場合(1000立方メートル当たり5箱以上は最小0.5までの範囲、遺物密度の高い場合(1000立方メートル当たり30箱以上)は最大2.0までの範囲とするのが適当である。
(ウ)出土遺物の内容
 一般的に、遺物量が増加すればそれに応じて整理等作業量は増加する。しかし遺物の種別・内容によっては、実測等に要する時間等が変わりその作業量が変動する場合がある。また、遺物量全体の中で図化し記録に残すものをどれだけ抽出するかは、出土量や遺物のもつ様々な質的な要素により、各地域において差が生じるものと考えられる。例えば、少量でも歴史的意義が高いものは小破片であっても図化する場合があり、逆に同型・同質の遺物が多量に出土する場合においてはその一部分のみを図化をすることもある。こうした点から出土遺物に関しては、その量だけではなく、それぞれの地域における出土遺物の特性を考慮した補正を行う必要がある。
(エ)発掘作業との人員編成比
 ここに示す整理作業等の標準歩掛は、発掘作業における調査員1名が指揮監督する作業員数が10人前後で実施した場合のデータから導いたものである。しかし大規模な調査や調査補助員が投入される場合等においては、これより多くの作業員を監督することがあり、発掘作業量に対する調査員数の割合が相対的に少なくなる。延べ調査員数を算出する標準歩掛は発掘作業の延べ調査員数を基礎にしているため、このような場合には必要な整理等作業量に応じた適切な調査員数が算出されない場合があることから、発掘作業における調査員と作業員の人員編成に応じた整理作業調査員数の適切な補正を行う必要がある。
(オ)整理作業等の作業分担
 整理作業等の標準歩掛は、実測・トレースの作業を基本的に作業員が行う場合を前提として算出していることから、これらの作業を調査員が行う場合においては、それに応じた一定の補正が必要となる。

(3)整理作業等期間の算出
 整理作業等に要する期間は、上記の方法により求めた調査員及び作業員の延べ人数に対して、調査員と作業員の1日当たりの人員編成により、所用日数はそれぞれ別に算出されることになる。しかし整理作業等における1日当たりの人員編成は、洗浄や注記あるいは接合等の作業のように、ほとんどが作業員が直接行う工程や、これとは逆に報告書の執筆のように調査員のみが行う工程があることから、全期間を通じて同じ人員編成をとることは適当ではない。この点は発掘作業のような一日当たりの人員編成が決まれば自ずと期間が算出されるのとは異なっている。
 したがって、整理作業等の期間は、算出された整理作業等の全体の作業量に対して、各工程において作業が効率よく進行するような調査員と作業員の人員編成に基づいて、整理作業等の期間が決定されることとなる。なお、調査員が整理作業等に専従できない場合や、実測等の作業を行うことができる一定の技能をもった作業員が確保できない場合には、さらに整理作業等の期間が延びることが考えられるので、期間の算出に当たってはこれらの条件を考慮する必要がある。

(4)報告書分量の目安
 発掘調査報告書は、発掘調査によって検出された遺構や遺物の内容に応じて必要な情報が過不足なく記載されていなければならないことから、その分量は各遺跡の規模・内容に応じて定まるものと考えられる。報告書の分量を左右するのは掲載される実測図・写真等の量とそれに伴う記載事項の分量であり、それは整理作業等の作業量とおおむね相関関係にあると考えられる。整理作業等のうち報告書作成の作業については特に調査員が関与する部分が多いことから、報告書の分量は調査員の作業量を表す延べ調査員数とある程度相関するものと考えられる。実態調査によれば、整理作業等に従事した調査員の延べ人数と報告書の分量を比較すると、調査員1名が1日当たりの報告書作成の分量は1.0頁を中心に0.6−1.4頁(A4判)の事例が多い。個別の遺跡の分量の算定に当たってはこの数値を参考にして、その内容に応じた過不足ない分量とするのが適当である。

(5)都道府県における積算基準の設定と留意事項
 各都道府県においては、以上に示した標準をもとにして、それぞれの地域における実績を踏まえて具体的な積算基準を作成することが望ましい。補正係数のうちの発掘作業期間と出土遺物の密度の要素は、前記(2)に示した標準歩掛と補正係数を参考にして、各地域で適切な補正係数を定めることが適当である。また、出土遺物の内容、発掘作業との人員構成比、整理作業等の作業分担等の要素については、各地域の実績を踏まえて補正係数とその具体的な条件を定めることが適当である。報告書の分量の目安についても、ここで示した数値を参考として、各地域の実績を踏まえて具体的なものを定めておくことが望ましい。

3 経費積算上の留意点

 本発掘調査に要する経費の積算標準に関する基本的な考え方については第2章の2で示したところであり、経費積算の具体的な方法に関する標準及びこれをもとに各都道府県で定めるべき基準については、本章の1及び2において示したとおりであるが、実際に具体的事業に対応して経費を積算するに当たっての留意点を示すと次のとおりである。

(1)発掘作業経費の積算
(ア)発掘作業に要する経費の積算を適切に行うためには、試掘・確認調査を的確に実施し、基本的な層序や遺構面数、遺構の内容や密度、遺物の内容や量等の遺跡の内容を正確に把握することが前提である。これらの事項について把握されたデータや知見が掘削対象となる土量、土質・遺構・遺物等の補正項目に関する判断材料となる。
 これらの事項を的確に把握するためには、通常、調査対象面積の10%程度について確認調査を行うことが必要であるとされているが、確認調査の精度を高めるためには、各遺跡ごとに確認調査の範囲・方法を工夫した上で、専門的知識と経験を備えた者が各事項に係る判断を行う必要がある。
(イ)本発掘調査の作業のうち測量、作業員の雇用等の業務を調査主体以外の業者へ委託するかどうかや工事請負により発掘作業を行うかどうかについては、本発掘調査の事業規模、遺跡の内容等、発掘調査の効率、それに伴う経費の観点を踏まえ、採否を判断する必要がある。なお、外部に委託する業務についてはそれぞれの業務に即した適正な基準に基づく設計によることとし、施工を適正に監理する必要がある。
 また、調査の進行にともなって、遺構・遺物の内容が明らかになり、それによって当初の積算が実態と異なることが明らかになった場合は、事業者と協議を行い、調査経費の変更等の措置を執る必要がある。その場合には、事業者に対して積算標準及びこれをもとに定められる都道府県の積算基準に即して変更内容を説明することが必要であり、積算の修正に際しては、その後さらに変更が生じないよう作業量を正確に見積もることが不可欠である。

(2)整理作業等経費の積算
 報告書作成までを含めた整理作業等の費用は、基本的には、発掘作業経費をもとにして積算することが可能であり、遺跡の内容が十分に把握されていれば、本発掘調査に着手する前に、発掘作業経費だけではなく整理作業等までの概算を見積もることができないこともない。
 しかし、発掘作業量は発掘調査の進行にともない修正を要する場合もあり、その場合は、発掘作業量をもとに積算された整理等作業量についても変更する必要があり、また、出土遺物の内容等に応じて補正が必要となることもある。このことから、整理作業等の積算は発掘作業が完了した段階で別途に行う方がより正確なものとなる。したがって、原則として発掘作業完了後にすみやかに整理作業等についての積算を行うことが適当である。ただし、事業の期間や性質等によっては、本発掘調査に着手する前に、本発掘調査に要する経費全体を積算しなければならない場合もあるので、その場合には、上記のように変動が生じる可能性を説明した上で積算を行い、必要があれば発掘作業の過程から完了までの間の適切な時期に見直しを行い、その変更を行うのが適当である。

4 標準の見直し

 今回示した発掘作業の積算の方法や基本的な考え方は、既存の各地方ブロックの積算標準にほぼ一致するもので、作業内容に即した作業量を積み上げていくという算出方法を採った。今後この方法による積算の実績を積み重ねることにより、ここで定めた標準歩掛や補正項目が適当であるかどうかについて、発掘技術の向上や「土木工事標準歩掛」の作業歩掛の動向等も考慮して見直しを行う必要がある。また、そのなかでこの方法の簡便化等の可能性についてもあらためて検討する必要がある。
 整理作業等の積算標準については、現在、具体的に整理作業等の総作業量を算定する基準が策定されている例が少ないため、その場合における算定方法の標準歩掛と補正係数は、目安として示すにとどめた。したがって、整理作業等について示した標準は発掘作業について示した標準とは精度の点で異なることから、特に今後の実績を積み重ねることにより、その基本的考え方と標準歩掛と補正項目及びその係数、報告書分量の目安等が適当であるかどうかについて十分検討し、必要な見直しを行う必要がある。また、整理作業等に係る技術の向上や電子媒体による記録類及び報告書のあり方等の検討を行い、その検討に伴う見直しを図ることも必要である。
 積算標準の総体的な見直しについては、今後の実績の蓄積を考えると、5年程度の期間をおいて行うことが適当である。


縄文学研究室トップ法令集トップ管理人:Nakamura Kousaku
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