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【1996年】
【『月刊文化財』1996年4月号(通巻391号)より】

出土品の取扱いについて(報告)

平成9年2月 埋蔵文化財発掘調査体制等の整備充実に関する調査研究委員会

目 次

はじめに
第1章 出土品の取扱いに関する基本的な考え方
 1 出土品の価値とその取扱いの制度
  (1)出土品の文化財としての意義
  (2)出土品の取扱いに関する制度とその運用
 2 出土品の保管・管理の現状と課題
  (1)出土品の保管・管理の現況
  (2)出土品の取扱いに関する問題点の指摘
 3 出土品の取扱いの今後のあり方
第2章 将来にわたり保存・活用すべき出土品の選択
 1 現状と課題
 2 改善方策
  (1)基本的な方向
  (2)選択の標準の大枠
第3章 出土品の保管・管理の現状と課題及び改善方策
 1 出土品の保管・管理の現状と課題
 2 改善方策
  (1)保管・管理の方法
  (2)保管・管理のための施設の整備等
第4章 出土品の活用の現状と課題及び改善方策
 1 出土品の活用と現状と課題
 2 改善方策
  (1)基本的な方策
  (2)新たな活用方法の開発
  (3)展示・公開施設の充実等
参考資料
 I. 調査研究委員等名簿
 II. 調査研究委員会等の審議経過
 III. 出土品の保管状況等に関する実態調査集計結果


はじめに

 埋蔵文化財発掘調査体制等の整備充実に関する調査研究委員会(以下「委員会」という。)は、平成6年10月に、近年の開発事業の増大に伴う埋蔵文化財発掘調査件数の増加等の埋蔵文化財の発掘調査に関する諸課題に適切に対応するため、埋蔵文化財発掘調査体制等の整備充実について調査研究を行うことを目的として設置された。調査研究を進めるに当たっては、各地方公共団体等における実態を踏まえより審議を深めるため、都道府県・市町村教育委員会及びその関係機関の実務担当者からなる協力者会議を設置した。
 委員会では、概ね(1)埋蔵文化財保護体制の整備、(2)埋蔵文化財包蔵地の周知化と開発事業との調整、(3)発掘調査の方法・期間・費用、(4)出土遺物の取扱と保管法、(5)その他、の検討課題について調査研究を進めることし、まず埋蔵文化財保護体制の整備に関する諸課題について検討を行い、平成7年12月には「埋蔵文化財保護体制の整備充実について」の報告を行ったところである。
 本年は出土品の取扱いに関して委員会6回、協力者会議5回を開催して検討を行った。検討に当たっては、地方公共団体(注)を対象として実態調査を実施するとともに、埋蔵文化財の関係団体からの意見聴取も行い、出土品の取扱いの実態や経験を踏まえつつ、出土品の取扱いに関する現時点における学術上の成果を反映するものを目指した。
 委員会においては、まず保管・管理を要する出土品を選択する必要性とその考え方を検討し、さらに管理上の利便性も考慮して、出土品の適切な保管方法について検討するとともに、出土品の積極的な活用のあり方についても検討した。この報告はこの検討の結果をとりまとめたものである。
 なお、埋蔵文化財保護行政は、従来、ともすれば発掘調査の急増への対応に追われ、各地方公共団体での埋蔵文化財の取扱いの標準化・効率化に向けた取り組みが不十分であったことは否めない。今回は出土品の取扱いについて検討したが、今後とも埋蔵文化財保護行政に関して、従来の経験や学術上の成果を踏まえ、標準化・効率化に向けた積極的な検討を進める必要がある。
 委員会としては、今後、文化庁及び地方公共団体において、この報告を踏まえ、所要の施策の実施を進め、また、更に検討を要する課題に積極的に取り組むことを期待する。また、出土品の取扱いを改善するためには、専門職員の充実をはじめとする埋蔵文化財保護体制の整備・充実、埋蔵文化財センター等の施設の整備・充実が不可欠であり、そのためのいっそうの理解と積極的な取り組みを期待したい。
 (注)全都道府県・市町村のうち出土品を保管している2,757の都道府県・市町村を対象として調査を実施した。したがって、この報告における数値等は、この地方公共団体における状況を表すものである。

第1章 出土品の取扱いに関する基本的な考え方

1 出土品の価値とその取扱いの制度

(1) 出土品の文化財としての意義
 発掘調査に伴う出土品(注)は、文献資料とは異なる特質を備え、我が国の歴史や文化を理解する上で欠くことのできない情報を提供する貴重な歴史的遺産である。
 近年、青森県の三内丸山遺跡の発掘調査や島根県加茂町での多数の銅鐸の発見等、我が国の歴史を理解する上において重要な発見が相次いでなされ、また、考古学上の新たな発見の積み重ねにより、我が国の歴史像が次第に明らかになってきており、国民の発掘調査や遺跡に対する関心が高まってきている。出土品についても、学術上の意義にとどまらず、我が国固有の文化を具現する文化的遺産として広く活用しなければならないという認識が高まっている。
 また、多くの市町村において、地域の特性を生かした特色ある地域づくりが進められているが、発掘調査に伴う出土品を地域の文化財として活用し、個性豊かな地域づくりに取り組んでいる市町村も多い。
 このような国民や地域社会での幅広い関心や認識の高まりに応え、発掘調査の成果としての出土品を文化財としていかに適切に保存・活用していくかということは、今後の埋蔵文化財行政の大きな課題の一つということができる。 

(注) この報告においては、(1)文化財保護法は、発掘調査により出土した遺物のうち、都道府県教育委員会等で文化財と認めたものを「文化財」としていること、(2)本報告で対象としているものは、そのような「文化財」に限らず、発掘調査現場で未整理なまま取り上げられたすべてのものを対象としており、必ずしも法律上の「文化財」に限られないことから、対象となる出土遺物については、原則として「出土品」という用語を用い、必要に応じ「出土文化財」という用語を用いている。


(2) 出土品の取扱いに関する制度とその運用
 発掘調査に伴う出土品のうち都道府県教育委員会等による鑑査の結果文化財と認定されたものは、ほとんどが所有者が判明しないものであるためその所有権は国庫に帰属する。
 国庫に帰属した出土品は、その学術的又は芸術的価値、適切な保存・活用の必要性等にかんがみ国において保有することとされたものを除き、地方公共団体へ譲与することを原則とすることとされている。実際上も国が保有しているものは毎年1〜3件程度であり、近年は、国で保有したものについても出土した地元の地方公共団体において保管し、活用しているものがほとんどである。
 出土文化財については、それが文化財保護法や地方公共団体の条例により重要文化財等として指定されない場合、現状変更や移動・公開等について法的な規制を受けない。しかし、文化庁では、出土文化財を地方公共団体へ譲与する際、当該出土文化財を適切な施設において一括して保存・活用すべきことを求めている。また、出土文化財の名称・内容、出土地・遺跡名等を記載した台帳を備えるとともに、滅失、毀損、所有者・所在地の変更については都道府県教育委員会を経由して文化庁に報告することを求めている。(ただし、譲与された出土文化財の活用のあり方や貸出し等の取扱いについての考え方や指針は示されていない。)
 このように、発掘調査に伴う出土品については、実態的には、ほとんどすべてが出土地の地方公共団体の所有となり、その地方公共団体で一括して保存・活用するという仕組みとなっている。 

2 出土品の保管・管理の現状と課題

(1) 出土品の保管・管理の現況
 地方公共団体における出土品の保管・管理の現状をみると、現在、地方公共団体で保管されている出土品は約459万箱(出土品量を60cm×40cm×15cmのプラスチックコンテナ箱に換算。以下同じ。)に上り、ここ数年毎年約30万箱づつ増加している。
 保管・管理の状況としては、暫定的な保管施設に保管されているものが246万箱で半数近くを占め、屋外に野積みされているものも約15万箱ある。
 また、保管されている出土品のうち未整理のものが約4割を占め、整理棚に収納されているものは191万箱と半数に満たない。
 このような状況は、出土品自体の保存・活用の観点からは好ましいものではなく、現に多くの地方公共団体において、すでに収蔵され、さらに毎年増え続ける膨大な量の出土品の取扱いに苦慮しており、その取扱いをどのように行っていくかは文化財保護行政上の大きな課題となっている。
 埋蔵文化財に関する現行の制度ができた昭和20年代以降、経済・社会情勢は大きく変化し、発掘調査量も急増し、それに応じて埋蔵文化財保護に関しても開発事業との調整のあり方、行政の体制、発掘調査の方法等においてめざましい発展をとげてきた。
 発掘調査の段階、整理作業の段階での出土品の取扱いや保管・管理のあり方についても各地方公共団体において工夫が積み重ねられ、改善のための努力が行われてきた。
 そのような改善努力がなされてきた一方で、現在、多くの地方公共団体において出土品の保管・管理を含む取扱いに苦慮する事態となっている背景・理由としては、およそ次のようなものがあると考えられる。
(ア) 近年、増加する開発事業に伴って発掘調査量が増加したこと。
(イ) 特に、近年、多量の出土品を伴う近世の遺跡の発掘調査が多くなったこと。
(ウ) 発掘調査自体の精密化により、調査対象となる出土品が増えたこと。
(エ) 多量の出土品の整理等を行うための時間や体制が十分でなかったこと。
(オ) 出土品の取扱いに関する明確な方針がなかったため、上記(エ)の事情もあり、発掘調査に伴う出土品をとりあえずすべて収蔵するといった取扱いがなされる例もあったこと。
(カ) 出土品の保管・管理に必要な施設の整備等が十分でなかったこと。

(2) 出土品の取扱いに関する問題点の指摘
 出土品に関する関心が高まり、その保存・活用が従来以上に求められる一方で、上記のように、多くの出土品が、未整理なまま、あるいは好ましくない形態を含めてさまざまな形で保管・管理されるという状況となっており、出土品を保管・管理している地方公共団体からは、このような状況に対し、出土品のうち保管・管理すべきものについての考え方を含め、出土品の保管・管理のあり方に関する方針を定めることを求める意見が強く出されている。
 また、平成7年11月の総務庁行政監察局「芸術文化の振興に関する行政監察結果報告書」においても、地方公共団体の中には出土品の保管スペースの確保に苦慮し、活用されている出土品が少ないものがあることが指摘され、出土品の状態や活用の可能性等に応じた保管方法の効率化を図るための取扱い基準を定めることが求められている。 

3 出土品の取扱いの今後のあり方

 以上のような現状や地方公共団体の意見等を踏まえ、かつ、今後、発掘調査事業量の増加に伴って各地方公共団体において従来以上に出土品の保管・管理のあり方が大きな問題となってくることが予想されることを考えると、出土品の取扱いについての基本的な考え方とそれに基づく取扱いの基準を明らかにする必要があると考えられる。また、発掘調査に伴う出土品のすべてをそのまま将来にわたり保管・管理していくことは、出土品の適正な保管・活用を図る観点からも適切ではない。むしろ必要な選択をした上で保管・管理の対象とすることが適切であると言える。
 この場合、出土品の取扱いに関する基本的考え方等は、出土品の種類、性格、活用のあり方等に係る各地域の事情を反映したものである必要があることから、文化庁においてそのあり方の大枠を示し、各都道府県がその地域におけるより具体的な方針を定めることとするのが望ましい。
 この委員会による出土品の取扱いに関する調査・研究は、このような視点で、出土品の保管・管理の現況を基礎としつつ、
 (1)将来にわたり保存・活用を要する出土品の選択
 (2)出土品の合理的な保管・管理のあり方
 (3)出土品の活用のあり方
について検討し、それらに係る施策の方向を提言しようとするものである。 

第2章 将来にわたり保存・活用すべき出土品の選択

1 現状と課題

 前述のように多くの地方公共団体において出土品の保管・管理を含む取扱いに苦慮する状況となっており、将来にわたり保管・管理すべき出土品の選択に関する基本的な考え方を示すことが必要となっている。
 現状においては、発掘調査を行っている現場の段階、発掘調査の現場から整理のために持ち帰る段階、整理・分類作業の段階、整理等が行われた後の段階等のいずれの時点においても選択を実行することについての標準や方針はなく、文化庁においても、地方公共団体に対し、これらを明示して選択に関する考え方等を指導したことはない。
 しかしながら、実際の発掘調査に際しては、特定の種類の出土品について、発掘調査の過程や出土品の整理等の段階で、地域の実情、出土品の重量その他の物理的性格等に応じて調査組織や調査担当者の経験に培われた方法によって保管しておくべきものの選択を行っている地方公共団体もある。
現在、地方公共団体において発掘調査現場や出土品整理等の段階で、出土品の選択を行い一定量のみを保管することとし、又は、記録をとるのみで保管は行わない扱いとしているものとしては、近世以降の瓦、近世以降の遺跡の遺構を構成する井戸枠・木樋・建物基礎材、住居・炉遺構・集石遺構・礫群等に使用されている自然石、古墳の葺き石・石室の石材、貝塚の貝殻、炭焼き窯跡から出土する木炭、近世以降の製鉄遺構・鍛冶遺構に伴う鉱滓、植物の種実や植物遺体、住居跡や土坑等の埋土等がある。
 ただ、地方公共団体においてこのような出土品の選択的な取扱いを行う際に、一般的な方針ないしは明確な標準を定めてこれを意識的に実施しているという例はなく、出土品の選択を行っている場合でも、調査組織や調査担当者の経験の度合いや選択の能力、選択についての時間的余裕の有無等の事情に左右され、各地方公共団体で様々な取扱いが行われているものと考えられる。また、最も極端な場合には、発掘調査現場からすべての出土品を持ち帰り、整理作業が行われないまま保管されるというような取扱いもみられるなど、各地方公共団体間の出土品の取扱いの差は大きいと考えられる。
このようなことから、出土品の取扱いを改善するためには、保管・管理する必要のある出土品の選択についての基本的な考え方を明らかにし、その上で、その基本的考え方に即した一定の標準を定め、それに準拠して保管・管理の対象とする出土品の選択を行うこととする必要がある。 

2 改善方策

(1) 基本的な方向
(ア) 将来的に保管・管理を要するものの選択に関する基本的な考え方
 出土品は、国民共有の貴重な文化的遺産であり、学術的にも豊富な情報を提供するものであるが、そのもつ重要度は一様ではない。また、出土品の種類、性格や形態も様々である。
 したがって、出土品については、まず、将来にわたり文化財として保存を要し、活用の可能性のあるものであるかどうかということを基準として選択を行い、保存・活用を要するものとされたものについて将来にわたって保管・管理することとする必要がある。
保管・管理を要する出土品の選択は、この基本理念に基づいて選択のための視点・要素ごとの考え方の大枠を明らかにし、さらに具体的な標準を定め、これに即して行うのが適切である。
 この選択に関する考え方及び標準は、出土品の取扱い全体が大要において全国的には一定の水準を保つ必要があることから、考え方の大枠は文化庁で示し、それをもとに各都道府県がその地域に適するより具体的な標準を定めることとするのが望ましい。
 なお、このような選択に関する基本的な考え方や後述する具体的な標準の視点・要素となる事項、標準の内容は、当然のことながら、文化財についての社会的認識の変化や判断の根拠となる学術的な知見の進歩・発展等に従ってその時代に最適なものに改められていくべきものであるから、これらについては、今後、国と地方公共団体が連携しつつ適宜その妥当性や有効性について検証、研究に努める必要がある。 

(イ) 選択を行う時期及び対象

 保管・管理を要する出土品の選択は、発掘調査の段階、出土品の整理作業の段階、それ以降の段階等いずれの時点でも行うことができる。
どの段階で選択を行うかは、出土品の種類や形状等、あるいは発掘調査主体側の事情等によってさまざまであると考えられる。
 具体的には、発掘調査現場の段階で全数を保存する必要がないと判断される場合には、その段階で記録をとる等必要な措置を講じた上で整理作業場へ持ち帰らず、あるいは全数のうちの一定量(数)のみを持ち帰ることとすることもあろう。発掘調査現場でそのような判断を行うことが困難な場合には、整理作業の段階で必要な記録をとり選択を行うこともあるであろう。
 また、選択は、整理作業の段階では保存することとされた出土品についても、その後必要に応じて、逐次、経常的に行う必要があり、現在収蔵・保管されているものについても選択を行うこととが必要である。 

(ウ) 保管・管理を要しないものとされた出土品の取扱い等に関する留意事項
 上記の選択の結果、保管・管理を要しないものとされた出土品については廃棄その他の処分を行うこととなるが、その場合にはその出土品の種類・性格・数量等に応じて、何を、どこに、どのように処分したかの概要に関する記録・資料を作成・保管するとともに、処理したものが、将来、無用の誤解・混乱を生ずることのないよう配慮する必要がある。
 なお、都道府県教育委員会においては、各市町村から上記の記録・資料の提出を受ける等により、管下における出土品の選択及びその後の取扱いの状況を把握し、必要に応じて市町村を指導するなど、その適正な取扱いの確保に努める必要がある。

(2) 選択の標準の大枠
 将来にわたり保管・管理する必要のある出土品を選択するに際して判断の要素・視点となる事項、選択の標準あるいは方針として具体化する場合の考え方の大枠は、次のとおりである。

◎基本的考え方
 出土品の選択は、将来にわたり保存し、活用を図る必要性・可能性の観点から、保管・管理していく必要があるかどうかを判断するものであり、その判断の基準となる考え方は出土品の種類・性格・活用の可能性等に係る各地域の事情等を反映したものである必要がある。したがって、具体的な標準あるいは方針は、以下に示す各要素・視点を総合的に勘案して各都道府県が定めることとするのが適切である。 各都道府県において具体的な方針や標準を定めるに際しては、各地域の事情や関連の学問分野等に係る要素を加える等により、適切な内容とする必要がある。また、国と地方公共団体が連携しつつ、適宜、その妥当性、有効性について検討・研究を進めることも必要である。

◎選択についての標準・方針の要素・視点となる事項
(1)出土品の種類
 出土品の種類・性格による分類の要素であり、出土品の選択的な取扱いの判断に際して最も基本的、かつ、重要な要素である。
 出土品の分類方法の一例として次のようなものが考えられる。この分類は人間の活動との関係の深さ・密接度の程度により分類したものであるが、一般的には人間活動との距離があるものほど選択を行う幅が大きくなるものと考えられる。
 たとえば、遺跡の当時の環境を示す自然物は、環境の状況を把握するに必要な量を採取すれば足り、遺構を構成する未加工の素材は、その総量が膨大である場合、状況等を記録した上でサンプルを保存することで足りるとする等のことが考えられる。
 《出土品の種類・分類例》
 ┌遺物(人又は人の活動に直接関係するもの)
 │ ├人の遺体又はその一部・人自体の痕跡等(人骨・頭髪・足跡等)
 │ ├道具(土器・陶磁器・石器・金属器・木器等)
 │ ├道具等製作時の副産物(石材チップ・木材削りかす・製鉄遺跡の鉄滓等)
 │ ├遺構を構成していた素材┬加工された素材:古墳の石室材・石垣の石材・木杭等
 │ │           └未加工の素材 :配石遺構の自然石・古墳の葺石・焼土・焼石等)
 │ └原料・食料等─────┬道具の原材料 :石器の原石・金属鉱石・粘土塊・アスファルト等
 │             ├家畜・栽培植物:イヌ・ウマの遺体等
 │             └自然遺物   :食べかす(貝殻・種子・動物骨等)
 │
 └自然物(自然環境を示すもの)─土壌・花粉・動植物遺体等

(2)時代
 出土品が製作され、又は埋蔵された時代の要素である。
 出土品の性格・価値は、それが製作・使用され、埋蔵された歴史的時代区分と不可分の関係にあり、そのいずれであるかは取扱いを考慮するに際しての一つの要素である。
 たとえば、瓦の場合、近世のものについては一定のサンプルのみを保存する等、特定の時代に属するある種類の出土品にあっては、残存状況その他の要素の如何を超えて取扱いが定められる等のことが考えられる。

(3)地域
 出土品が出土した場所・地方あるいは歴史的・文化的な区域の要素である。
 出土品の性格・重要度は、それが出土した場所が属する歴史的・文化的な成り立ちと不可分の関係にあり、そのことは、取扱いを考慮するに際しての重要な要素である。
 たとえば、同じ様式の出土品であっても、通常それが分布する文化圏の外で出土した場合は、文化の伝播の範囲等を示す点で残存状況その他の要素の如何を超えて貴重とされる等のことが考えられる。

(4)遺跡の種類・性格
 出土品が出土した遺跡の種類・性格の要素である。
 出土品は、通常、それが埋蔵されていた遺跡との関係でその性格・重要度等を確定できるものであり、いかなる種類の遺跡と関係するものであるかは、その取扱いを考慮するに際しての重要な要素である。
 たとえば、同種の出土品であっても、出土した遺跡の種類・性格との関係のあり方によって、その性格・重要度の評価・認識は異なり、残存状況等の他の要素の如何を超えて貴重とされる等のことが考えられる。

(5)遺跡の重要性
 出土品が出土した遺跡の重要度の要素である。
 出土品が出土した遺跡の重要度は、その出土品の取扱いを考慮するに際しての要素の一つである。
 たとえば、同種の出土品であっても、出土した遺跡の重要度が高い場合は、その遺跡の重要性を総合的に具現する関係の一括資料として保存しておく必要性が高いとされる等のことが考えられる。

(6)出土状況
 出土品の出土状況、特に遺構との関係に関する要素である。
 遺構に伴って出土したものか否か等その出土状況は、その出土品の性格・重要度の認識・評価に直接関係するものであり、その取扱いを考慮するに際しての要素の一つである。
 たとえば、同種の出土品であっても遺構に伴って出土したものは表土中など遺構に伴わない状態で検出されたものより保存しておく必要性が高いとされる等のことが考えられる。

(7)規格性の有無
 出土品が規格品であるか否かの要素である。
 規格品であるか否かは、その出土量や残存度の要素等との相関関係を含めて、その取扱いを考慮するに際しての要素の一つである。
 たとえば、桟瓦等の型作りによる規格品が多量に出土し、それぞれの残存度の良否に大差がある場合、状況・総量等を記録した上で、残存度のよいものを選択的に保存する等の取扱いが考えられる。

(8)出土量
 同種・同型・同質の出土品の出土量の要素である。 同種・同型・同質のものがどの程度出土したかは、規格性の要素、残存度の要素等との相関関係を含めて、その取扱いを考慮するに際しての要素の一つである。
 たとえば、近世の屋瓦、陶磁器窯跡からの出土品、製鉄遺跡からの鉄滓、貝塚の貝殻等同種・同型・同質のものが同一遺跡内から多量に出土する場合、総体の記録を採った上で一定量のみを保存する等の取扱いが考えられる。

(9)残存度・遺存状況
 出土品の残存の程度(保存の良否)の要素である。
 出土品がどの程度の残存度、形状のものであるか(完形品であるか、破片であるか等)は、重要度や活用可能性の要素等との相関関係を含めて、その取扱いを考慮するに際しての重要な要素の一つである。
 たとえば、接合の可能性がない程度に磨滅した土器片等は、格別活用の方途がなければ保存を要しないこととする等の取扱いが考えられる。

(10)文化財としての重要性
 出土品自体がもっている文化財としての性格・重要性の内容・高低の要素である。 他の要素と独立にその出土品自体がもっている文化財としての性格や重要性の高さは、出土品の取扱いを考慮するに際しての重要な要素の一つである。
 たとえば、残存度、出土遺跡との関係等の要素においては必ずしも注目に値しないが、文字や絵画があるなど人の活動や文化を復元・把握するために有効である等の評価により貴重なものとされ、保存を要することとする等の取扱いが考えられる。

(11)移動・保管の可能性
 出土品の大きさ・形状・重さ、それによる移動・保管の可能性の要素である。
 出土品の大きさ・形状・重量は、移動や保管、活用の可能性を物理的に規制するものであり、出土品の取扱いを考慮するに際しての要素の一つである。
 たとえば、古墳の石室を構成していた石材、配石遺構の石材のように巨大で移動や保管が極めて困難なものについては、記録を採った上で保存しないこととする等の取扱いが考えられる。

(12)活用の可能性の要素
 出土品の将来的な活用の可能性の有無・程度等に関する要素である。
 将来において活用の可能性があるかどうか、どのような活用の方途があるかは、その取扱いを考慮するに際しての基本的、かつ、重要な要素である。その時点で想定できるいかなる方法によっても活用の可能性がみあたらない出土品は、保存しておく必要がないとする必要があろう。

第3章 出土品の保管・管理の現状と課題及び改善方策

1 出土品の保管・管理の現状と課題

(ア)収蔵量及び増加量の状況
 平成7年3月現在で、地方公共団体に保管されている出土品の総量は約459万箱に達しており、これを都道府県、市町村別にみると、都道府県に約177万箱、市町村に約282万箱となっている。平均すると1都道府県当たり約38,000箱、1市町村当たり約1,000箱である。
 保管されている出土品を種類別にみると、土器が全体の70%を占め、次いで瓦類が9%、石器・石製品が6%、木製品が4%、鉱滓類・木炭が2%、以下自然礫・自然石、動物遺体、埴輪、植物遺体、金属製品・人骨・骨角器などが続く。
 出土品の増加量をみると、平成2年度から6年度までは年間約30万箱づつ増加している。増加のペースは年によってほとんど変わりがなく、発掘調査の事業量も同様に増加していることから、今後も同様のペースで増加し続けることが予想される。

(イ)保管・管理のための施設及び保管・管理の状況並びに課題
 保管・管理のための施設としては出土品保管専用の恒常的施設(鉄筋・鉄骨、軽量プレハブ、木造等)と仮置き用の暫定的施設(本来は別目的の鉄筋・鉄骨施設,軽量プレハブ、木造施設、テント等)がある。
 出土品のうち恒常的保管施設に保管されているのは約213万箱(約47%)、暫定的施設に保管されているのは約246万箱(約53%)となっている。このうち約197万箱が軽量プレハブ、テント等の簡便な施設に保管されている。
 各施設における保管状況をみると、恒常的施設、暫定的施設を通じて棚に収蔵されているものが約191万箱(42%)、床に積み上げられているものが約243万箱(53%)、戸外に野積みのものが約15万箱(3%)となっている。
また、保管されている出土品のうち未整理のものが約40%を占めている。
 このため、保管・管理を要する出土品の選択や合理的な保管・管理のために必要な施設の整備、出土品整理の促進により野積み等の不適正な状況にあるものの解消、が早急に取り組むべき課題である。
 整理済みで整理棚に収納されている出土品について、その収納方法をみると、材質、遺存状況(完形品かどうか等)、報告書に登載されたものであるか否か等の区分で収納方法を区別している地方公共団体は606団体(33都道府県、583市町村)で全体の約25%である。
 収納スペースを効率的に利用するためには収納方法を区別する方がよいと考えられるので、この方法の積極的活用を検討する必要がある。
 出土品を、出土した遺跡単位で一括して保管しているかどうかについてみると、出土遺跡ごとに一括して保管しているところが33都道府県(65%)、1,937市町村(84%)の計1,970都道府県・市町村となっている。文化庁では出土文化財の地方公共団体への譲与に際して、一括保存を指導しているが、前述の収納方法の区別化を含めて、合理的な保管・管理を行う場合には、必ずしも一括保管にこだわる必要はないものと考えられる。
 出土品の管理のための登録や検索についてコンピューターや台帳によりシステム化を行っているところは271都道府県・市町村(都道府県の53%、市町村の10%)となっており、総体としてシステム化は進んでいない。適切な保存と積極的な活用のための管理のあり方として改善を要する点である。

2 改善方策

(1) 保管・管理の方法
(ア) 基本的な方向
 出土品を適切に保存・活用し、かつ、保管スペースを効率的に利用していくためには、種々多様な出土品を一律に取り扱うのではなく、その性格・重要度・形状、保管の方法、活用の頻度、報告書記載の有無等の諸要素を勘案して出土品を区分し、その区分に応じて保管・管理の態様をいくつかの種類・段階に分け、適正かつ体系的に保管・管理を行うこととすることが必要である。
 この場合、出土品の保管・管理は必ずしも同一遺跡からの出土品は同一の地方公共団体で一カ所に一括して保管するという考え方にとらわれる必要はなく、柔軟な考え方に立った対応が必要と考えられる。
 なお、出土品の暫定的施設での仮置きや床・屋外での積上げ状態を解消し、適正な保管・管理を進めるには、まず発掘調査現場から取り上げてきたまま未整理の状態で保管されているものの整理を進める必要がある。
 整理作業を促進させるためには、整理作業体制や作業を効率的に実施できる整理場所の充実等が必要である。

(イ) 出土品及び保管・管理の態様の区分
 適正かつ合理的・効率的な保管・管理のための出土品の区分を行うについては、次のような要素を総合的に勘案する必要がある。
 (1)種類・形状・形態の要素
    出土品の性質、完形品・破片等の区別、出土品の大きさ・重量等(人工物であるか自然物であるか、完形品であるか破片であるか、通常の保管施設に収納できる大きさであるかどうか等)の要素である。
 (2)材質・遺存状況の要素
    出土品の材質(金属製品・土製品・木製品等の別)及び破損・劣化の程度、保存処理や劣化防止の措置を経常的に執る必要があるか否か、保管・管理のための特別の施設・設備を必要とするか否かの要素である。
 (3)文化財としての重要性の要素
     出土品の文化財としての重要性の程度(ひいては活用の可能性の高低)の要素である。
 (4)発掘調査報告書・記録等への登載の有無の要素
    発掘調査報告書や記録等に登載され、その存在が広く知られたものであるか否かの要素である。
 (5)整理済み・未整理の要素
    発掘調査による出土品として体系的な整理作業を完了したものであるか否かの要素である。
 (6)活用の状況・可能性の要素
    活用の頻度・内容等の要素である。

 出土品については、上記の各要素を総合的に勘案して作成した方針に基づき、必ずしも一遺跡出土品一括保管の考え方にとらわれずに保管・管理することも可能とすることが適当である。この場合、保管・管理に際しては、たとえば次のような3区分があると考えられる。
 (1)種類・形状・形態、文化財としての重要性の要素を総合的に勘案し、展示・公開等による活用の機会が多いと考えられるもの。
    常時展示するものは展示施設において保管・管理することになるが、それ以外のものについても、種類・形状・形態や活用の頻度を考慮し、一般の収蔵庫とは別の施設で保管・管理することも考えられる。材質・遺存状況において脆弱なもの、特別の保存措置を要するものについては、適切な収納・保管設備、空調などの環境調整設備を整備することが必要となろう。

 (2)文化財としての重要性、活用の頻度等において(1)の区分に次ぐもの。
    報告書に記載されたものとそれ以外のもの、完形品とそれ以外のもの、展示・公開や研究資料としての活用の可能性の多少等の観点で、さらに数区分に分けることも考えられる。(2)の出土品については、保存及び検索・取出しの便と収蔵スペースの節約を考慮しつつ収蔵箱に入れ収蔵棚に整理する等、適正な方法で保管・管理する。
 (3)文化財としての重要性、活用の可能性・頻度が比較的低いもの。
    必要があれば取出しが可能な状態で、保管スペースを可能な限り効率的に利用できる方法で収納する。

(ウ)保管・管理に際しての情報管理
 前述のように出土品を区分して保管・管理する場合には、それと同時に、どの出土品がどこに保管されているか等の情報が管理され、保存・活用の要請に対し的確に対応することができるようになっていなければならない。
 このためには、コンピュータを利用する等により、出土品の名称・内容・数量・発見時期・出土遺跡名、発掘調査報告書への登載状況、保管の主体・場所等に関する情報・記録を作成の上組織的に管理し、新たな出土品が加わった場合の登録や情報の取出しが必要な場合の検索等が円滑に行えるシステムを整備することが必要である。
 このことは、特に、出土品を他の施設で保管・管理する場合には、不可欠のものである。

(2) 保管・管理のための施設の整備等
 出土品について上述のような体系的な保管・管理を行うためには、各地方公共団体において恒常的な施設を充実し、適正な保管・管理を可能にするだけの設備やスペースを確保する必要がある。また、保管・管理のための施設の整備に際しては、地震等の災害に耐えうる構造のものとする必要がある。
 このような施設としては、従来、各地方公共団体において、埋蔵文化財収蔵庫、歴史民俗資料館、埋蔵文化財調査センター、出土文化財管理センター等が設置されてきているが、今後とも、出土品の保管・管理方針に沿った適正な保管・管理が行われるよう、各地方公共団体における出土品保管施設の整備とそのための財政的措置が必要である。
 出土品の適切な保管・管理のためには、施設の整備とともに専門的知識をもった職員による出土品の保管・管理の体制が置かれることが必要である。
 また、適切な保管・管理のための新たな施設・設備・器具類の開発も必要である。これまでは市販のコンテナケース箱、鉄製の棚等を利用しての保管が主体であったが、より適切な保管・管理のためには既存の施設・器具等の改善や新規開発も望まれる。

第4章 出土品の活用の現状と課題及び改善方策

1  出土品の活用の現状と課題

 出土品の展示、貸出等の活用の状況については、展示・公開、学校教育での利用、研究目的の活用等の目的のものが多いが、総じて活発でない。また、出土品の保管・管理情報を提供する体制も整備されていない。
 出土品の展示・公開は博物館等で行われる場合が多いが、出土地に建設された駅等で展示されている例もある。地方公共団体のうち出土品の展示・公開専用施設をもっているのは約45%であり、専用展示・公開施設がない地方公共団体での出土品の活用は総じて活発でない。

2  改善方策

(1) 基本的な方向
 埋蔵文化財の保護や発掘調査に対する国民の理解と協力を促進するためにも、出土品の積極的 な活用を図ることが必要である。
 このため、出土品の一括保管の考え方にとらわれず、積極的な活用のため条件を整備するとともに展示・公開のための施設・体制の整備や保管している出土品に関する情報の地方公共団体間や研究機関等による共有も必要である。

(2) 新たな活用方法の開発  従来の活用は、公立博物館での定型的な方法による、出土品中の優品の展示・公開が中心。今後は、(ア)博物館等展示専用施設における活用の改善・充実、(イ)学校教育での活用の拡充、(ウ)各地域の住民に対する活用の工夫、(エ)民間施設を有効に利用した活用、(オ)他の地方公共団体や外国との連携、(カ)学術的な活用等、出土品の積極的な活用を推進する。

(3) 展示・公開施設の充実等
 地方公共団体においては、出土品の展示・公開等その活用の推進のための施設の設置を進めるとともに、既存の施設についても、より積極的な活用に適した施設として充実・改善を図ることが必要。また、出土品の広範な活用のため、出土品の保管・管理や活用状況に関する積極的な情報発信が必要である。

参考資料

T.調査研究委員等名簿 【略】

U.調査研究委員会等の審議経過 【略】

V.出土品の保管状況等に関する実態調査集計結果 【略】



縄文学研究室トップ法令集トップ管理人:Nakamura Kousaku
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