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【1996年】
庁保記第75号  
平成8年10月1日

各都道府県教育委員会教育長 殿
文化庁次長

埋蔵文化財の保護と発掘調査の円滑化等について(通知)



 標記のことについては、昭和56年7月24日付け庁保記第17号昭和60年12月20日付け庁保記第102号及び平成5年1月19日付け庁保記第75号で通知したところであり、貴教育委員会、貴管下各市町付(特別区を含む。以下同じ。)教育委員会及び関係機関の御努力により、逐次必要な措置が講じられ、改善が図られているところであります。
 しかし、埋蔵文化財の保護と発掘調査に関しては、平成6年7月6日付けの規制緩和に関する閣議決定において今後講ずべき措置が示され、平成7年11月の総務庁行政監察局による行政監察結果の報告において勧告が行われ、埋蔵文化財保護と開発事業との適切な調整、発掘調査の迅速化、発掘調査に係る費用負担の明確化等が指摘されるなど、その一層の適切な実施が求められています。
 また、文化庁では、平成6年度から「埋蔵文化財発掘調査体制等の整備充実に関する調査研究委員会」を設け、埋裁文化財保護体制の整備充実について調査研究を行い、平成7年12月に同委員会から調査研究結果の報告が行われたところであります.
 ついては、貴教育委員会におかれても、上記の通知の趣旨の徹底を図るとともに、特に下記の事項について適切な措置を講じられるようお願いします。
 なお、貴管下の各市町村教育委員会に対し、この趣旨を徹底するとともに適切に御指導くださるようお願いします。


1 基本的事項
(1)埋蔵文化財は国民共有の財産であると同時に、それぞれの地域の歴史と文化に根ざした歴史的遺産であり、地域の歴史・文化環境を形作る重要な要素であることから、基本的には地域で保護し活用するという理念に基づいて進められる必要があること。
(2)埋蔵文化財の保護についてほ、重要な遺跡の保存、行政の体制整備、調査方法の改善等必要な施策の積極的推進に努めること。
(3)開発事業の事業者その他の関係者に対しては、埋蔵文化肘の保護の趣旨を十分説明し、その理解と協力を基本として開発事業との調整、発掘調査その他の措置を講ずること。
(4)埋蔵文化財保護の施策については、広く国民の理解を求めその協力によって進めることが肝要であることにかんがみ、発掘調査の成果の公開や広報活動等に積極的に取り組むこと。
(5)各地方公共同体における開発担当部局等教育委員会以外の組織・機関に対し埋蔵文化財の保護及びその関係行政に対する理解を求め、具体的な埋蔵文化財保護に関する施策の実施に際しては、それらとの連路・協調のもとに進めることかできるようにすること。

2 埋蔵文化財保麓・発掘調査体制について
(1)地方公共団体における体制の整備・充実
 各地方公共団体においては、埋蔵文化財の保護、開発事業等との調整、発掘調査の実施等の各行政を進めるについて、十分な数の適切な対応能力を備えた職員を確保するとともにその能力の向上を図る必要がある。
  また、地方公共団体とその設置する発掘調査組織等との間の人事交流を促進するとともに、埋蔵文化財の保護に関する調整に当たる部署及び発掘調査に当たる部署にそれぞれ適切な人材が配置されるよう配慮することが望ましい。
  なお、発掘調査を実施する組織・機関は、発掘調査を円滑に進めるために十分な職員体制を備えるとともに、財政的な基盤を確保する必要がある.
(2)都道府県の役割と体制整備
 都道府県や自ら大規模な、あるいは複数の市町村にまたがる埋蔵文化財の保護及び開発事業との調整、発掘調査を行い重要な遺跡の保存活用等を国、市町村と連携して推進するとともに管下市町村における埋蔵文化財保護及び発掘調査に関する指導、援助及び連絡調整を行うものである。
 このため都道府県は、自らが行う埋蔵文化財保護行政及び発掘調査のための体制の整備や職員の研修に努めるだけではなく、管下市町村における埋蔵文化財保護及び発掘調査並びに職員の研修に係る指導、援助及び連絡調整を行うために必要な体制を一層整備、充実する必要がある。
(3)市町村の役割と体制充実
 地域で保護し活用するという埋蔵文化財の基本的考え方からも、市町村は埋蔵文化財の発掘調査、重要な遺跡の保存・活用等について、重要な役割を担うものであり、地域の埋歳文化財保護及び発掘調査のために必要な組織、体制を整備する必要がある。
 このため、埋蔵文化財担当専門職員を配置していない市町村においては、少なくとも埋蔵文化財保護の基本的行政に支障がないよう専門職員の配置を促進するとともに、既に専門職員を配置している市町村においても適切な理恵文化財保護行政の推進と経常的な発掘調査の円滑な実施のため、適正な体制の整備、
充実を推進するとともに、職員の研修機会の充実を図る必要がある。
 なお、小規模の市町村の場合、一定の地域内に所在する複数の市町村が共同して広域の発掘調査組織を設けることも有益であると考えられる。このような場合には、広域調査組織の設立、運営に当たっての関係市町村間の理解と合意の確保、各関係市町村教育委員会と広域調査組織との連携、職員の採用形態等について十分配慮し、その運営が円滑に行われるよう留意すること。
(4)地方公共団体間の専門職員の相互派遣
 各地方公共団体の対応能力を超えるような発掘調査事業の急激な増加等に対応して円滑な発掘調査等の推進を図るためには、都道府県と市町村の間あるいは市町付相互間で専門職員を相互に出向、派遣する等相互支援のための方策を積極的に講ずる必要がある。
 このため、特に都道府県教育委員会においては、管下の市町村における発掘調査事業の動向とこれに対する対応能力等の状況を定期的に把握するとともに、体制が不十分な市町村への専門職員の出向、派遣、市町村間の専門職員の出向、派遣の調整等を積極的に推進し、各都道府県内における発掘調査が円滑に実施されるよう努めること。
 なお、文化庁としても、大規模な災害に対応する場合等、当該都道府県内の発掘調査の体制では発堀調査事業量の急激な増加への適切な対応が困難な場合には、関係地方公共同体とも協議しつつ、他の都道府県からの専門職員の派遣等の能力、支援をお願いしてきているところであり、都道府県間の相互協力、支援についても引き続き配慮願いたい。
(5)都道府県と市町何との発掘調査等の分担区分の見直し等
 発掘調査等に関する都道府県と市町村の役割分担については、市町村関係以外の公共事業に係るものについては都道府県が、市町村関係の公共事業及び民間事業に係るものについては市町村何がそれぞれ担当する等、各都道府県ごとに開発事業者の種別、発掘調査の規模、複数市町村にまたがるか否か等によりある程度確立してきている。
 しかしながら、市町村の分担する発掘調査事業が過大になる等、従来の役割分担でほ都道府県内における発掘調査への円滑・迅速な対応が困難な場合も生じている。
 このため、従来の発掘調査に関する役割分担では都道府県又は市町村における発掘調査への適切な対応が困難な場合には、都道府県教育委員会は市町村教育委員会とも協議し、都道府県と市町村との役割分担の区分を見直すなど、開発事業の事業者、内容等の変化を考慮した柔軟な対応を行うことにより発掘調査の円滑な実施を図ること。
(6)民間調査機関の適切かつ効果的な導入
 発掘調査への民間調査機関の導入については、地方公共団体における埋蔵文化財保護体制の整備を前提に、導入の形態、民間調査機関を導入する範囲等についての明確な方針の下に行うこと。この場合、次のような原則により行うものとすること.
 ア 発掘調査に関連する各種の仕事について
 排土、測量、写真撮影等、発掘調査に関連しこれを支援する仕事については、発掘調査の効率的な実施のために有効な場合は、民間調査支壊機関の効果的な導入を図ること。
 イ 発掘調査について
 発掘調査についての民間調査機関の導入については、本来当該発掘調査を実施すべき地方公共団体等が一定程度の発掘調査体制を有している場合であって、その発掘調査体制では発掘調査が著しく遅延している場合又は短期的な発掘調査事業の急増により現在の体制では調査の遅延等の事態が生ずることが予想され、他の地方公共団体からの専門職員の派遺その他の支援等によっても対応することができない場合に限って、次の要件のもとに行うこと。なお、発掘調査への民間調査機関の導入を進めることにより、地方公共団体の発掘調査体制の整備が遅滞することのないよう十分留意すること。
 1 導入しようとする発掘調査機関は、発掘謂査について十分な資質を有する担当職員を備えており、埋蔵文化財の発掘調査を適正に実施する能力を有するものであること。
 2 民間の発掘調査機関の導入は、発掘調査を実施する地方公共団体等の発掘調査体制に組み込む形態で行うものとし、発掘調査機関の選択、発掘調査の実施の管理等は、当該地方公共団体が責任をもって行うこと。

3 発掘調査経費について
(1)発掘調査経費負担に関する理念・根拠
 開発事業等の工事に伴い行われる埋蔵文化財の発掘調査の経費は、従来から、当該開発事業等の事業者に対して負担を求めることとしている。
 これは、埋蔵文化財は、我が国の歴史を解明する上で重要な価値を有する貴重な国民共有の財産であり、文化財保護の基本的理念としては、可能な限り現状で保存することが望ましいものであるが、周知の埋蔵文化財包蔵地において開発事業等が計画され、埋蔵文化財を現状のまま保存することができない場合には、少なくとも、発掘調査によって当該埋蔵文化財の記録を保存することとし、当該文化財の現状による保存を不可能とする原因となった開発事業等の事業者に当該発掘調査の実施とその経費の負担を求めることとしているものである。
また、開発事業等の事業者による経費の負担を含めた発掘調査の実施については、文化財保護法第57条の2第2項による指示等及び「埋蔵文化財関係の事務処理の迅速適正化について」(昭和56年2月7日付け庁保記第2号)による各都道府県教育委員会の指導に基づき行われているものである。
(2)事業者に負担を求める発掘調査経費の範囲
 開発事業等に伴う埋蔵文化財の発掘調査に関して開発事業等の事業者に経費の負担を求めるのは、発掘調査作業に要する経費(機械器具の借損料、立入補償費等を含む。)、出土文化財の整理等に要する経費(応急的な保存処理のための費用を含む)、報告書作成費等である。
 なお、開発事業等の事業者に負担を求める経費の積算に当たっては、当該開発事業に伴う埋蔵文化財の記録保存のために必要な範囲にとどめる等その節減に努めること。
(3) 発掘調査経費、期間の積算根拠策定とその活用
 開発事業等に伴う発掘調査の経費及び期間については、各地方ブロックごとの標準的な積算基礎の策定がほぼ完了したところであり、今後は、標準的な積算基礎の具体的な事実への適用を進めるものとすること。また、発掘調査経費負担を求めることとなる事業者に対しては、具体的な積算根拠等について十分説明すること。

4 発掘調査の円滑・効率的な実施等について
 開発事業等に伴う発掘調査等の円滑・効率的な実施等のため、次の点について適切な措置を執ることとされたい。
(1)開発部局との連携の強化
 各地方公共団体における開発事業等を実施し、又は開発事業等に対して指導等の行政を行ぅ部局との間の連携を強化し、開発事業等と埋蔵文化財の保護、発掘調査の実施等との円滑な調整の実現を図ること。
(2)開発事業等との調整・発掘調査等の円滑な推進開発事業等と埋蔵文化財の保菱との調整は、当該開発事業に関する他の行政上の指導や手続きと並行して迅速に行うとともに、事業者に対し必要な事項を明確に説明し、調整や発掘調査等の各段階において必要となる措置については十分な理解を得た上で、その円滑な推進に努めること。
 なお、事業者との調整の経過については逐次記録し、調整の結果は協定書等にまとめること。
(3)工事の種類・形態ごとの発堀調査等の対応に関する標準の策定
 開発事業に伴い埋蔵文化財の記録保存のために行う発掘査は、原則として次のような場合に、必要な範囲について行うものであるので、具体的な各事案に即して適切に対処すること。
1 工事による掘削が埋蔵文化財に及ぶ場合
2 恒久的な建築物、道路その他の工作物を設置する場合
3 盛土、一時的な工作物の設置等で、それが埋最文化財に影響を及ぼす虞のある場合
 上記の原則に則して、具体的な開発事業につき発掘調査を必要とするか杏かの判断の標準については、現在、各地方ブロックごとに検討が進められているところであるが、今後とも検討を推進するとともに、策定した標準の活用を図ること。

5 発掘調査成果の活用等
(1)埋蔵文化財の保護についてほ、広く国民の理解を求め、その協力によって進めることが肝要であることにかんがみ、発掘調査現場の適切な方法による公開、出土文化財の展示等、各地方公共団体における埋蔵文化財保護に関する事業に関する広報活動の積極的な実施に努めること。
(2)発掘調査終了後は、可能な限り速やかに調査結果の客観的資料化を行い、発掘調査報告書の早期作成に努めること。


縄文学研究室トップ法令集トップ管理人:Nakamura Kousaku
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