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【2000年】
【『考古学研究』47-4より】
庁保記第236号  
平成12年11月17日

各都道府県教育委員会教育長 殿
文化庁長官

埋蔵文化財の発掘調査に関する事務の改善について(通知)

 今般、埋蔵文化財の一部の学術調査において、事実のねつ造という極めて重大な行為が行われたことが判明しました。これは埋蔵文化財の発掘調査に村する国民の信頼を著しく損なうものであり、誠に遺憾であります。
 埋蔵文化財は、我が国と全国各地域の歴史や文化の成り立ちを理解する上で欠くことのできない国民共有の貴重な歴史的財産であるとともに、将来の文化の向上・発展の基礎をなすものであり、埋蔵文化財の発掘調査及び出土品の取扱いについては、文化財保護法(昭和25年法律第214号。以下「法」という。)に基づき、適正に行われる必要があります。
 埋蔵文化財の発掘調査に関する事務及び出土品の取扱いについては、これまでもその適正化をお願いしてきたところですが、今回の経緯を受け、改めてその改善を図る必要があると考えられます。
 ついては、平成12年4月から、法第57条第1項の規定による埋蔵文化財の発掘調査に関する届出に係る事務は、法第99条第1項第6号及び文化財保護法施行令(昭和50年政令第267号)第5条第1項第5号の規定により、原則として都道府県教育委員会が行うこととされたことを踏まえ、各都道府県教育委員会におかれては、下記の事項に十分留意上、埋蔵文化財保護行政の適切な事務処理に当たっていただくようお願いします。



1 発掘調査の目的、調査体制等について
 法第57条第1項の規定による発掘調査の届出を受理したときには、次の事項につき、適切であるかどうかについて確認することが必要であること。

(1)発掘調査の目的等
 発掘調査の目的が埋蔵文化財の保護の観点から適切なものであるとともに、当該調査の目的に照らして発掘調査の対象範囲、規模、調査体制、調査期間、調査方法等が適切なものであること。

(2)調査主体及び発掘調査担当者
 @ 調査主体
  調査主体となる個人又は組織が、次のすべての事項に該当する者であること。
 ア 計画されている発掘調査全体を適切に行い、完了させることができ、かつ、発掘調査報告書を適切に作成できる専門的な能力を有している者であること
 イ 発掘調査結果の評価・公表及び遺跡や出十品の保護・活用を適切に図ることができる者であること
 ウ 過去に発掘調査となった遺跡の発掘調査報告書を適切に作成している者であること

 A 発掘調査担当者
  発掘調査担当者が、次のすべての事項に該当する者であること。
 ア 専門的知識・技術の面で、調査の対象となる遺跡について発掘調査を実施するのに十分な能力と経験を有し、発掘調査の現場の作業を掌握して発掘調査の全行程を適切に進行させることができるとともに、発掘調査報告書を適切に作成できる者であること
 イ 過去に発掘調査担当者となった遺跡の発掘調査報告書を適切に作成している者であること
 B 複数の発掘調査に従事する調査主体・発掘調査担当者
 複数の届出において、同一個人又は組織が、期間の重複する複数の発掘調査における調査主体又は発掘調査担当者として記載されている場合には、それぞれの発掘調査計画を対比した結果、それらすべての発掘調査が適切に遂行され得るものであること。

(3)客覿性を確保するための仕細み
 発掘調査の目的・規模等にかんがみ、その必要性に応じて、発掘調査についての客観性を確保するための第三者による検討の仕組みが設けられていること。
 また、その仕組みが、構成・規模・専門分野等の観点から適切なものであること。

2 必要な事項の指示について
 受理した届出及び上記1により確認した内容によっては、法第57条第2項の規定により、次のような事項を指示することが必要であること。
 なお、発掘調査が適切に行われていない等の事情が判明した場合などには、発掘調査開始後であっても指示を行うことが必要であること。
(1)発掘調査計画の是正
 発掘調査の対象範囲や規模に比べて調査体制が十分でないなど、届出に係る発掘調査の目的、対象範囲、規模、調査体制、調査期間、調査方法等の発掘調査計画が適切でないと認められる場合は、その計画内容を是正して発掘調査を実施すること。
(2)客観性を確保するための仕組みの設置等
 発掘調査の対象となる遺跡の性格・内容や重要性等の観点から必要であると認められる場合には、発掘調査の計画及びその実施、遺跡の保存・活用、出土品を含む遺跡の評価等についての客観性を確保するため、調査主体において、学識経験者や地方公共団体の専門職員等の第三者により構成される委員会を組織するなど、検計の仕組みを設けること。
(3)発掘調査報告書等の提出
 発掘調査が適切に実施されているかどうかを把握するため、発掘調査の結果については、その概要報告書を調査終了後すみやかに、また、調査の過程、調査方法、調査成果等を客観的に示した内容の発掘調査報告書を発掘調査の内容等に応じて定めた一定の期間内に提出すること。
 発掘調査が複数の年次にわたり行われるためその進捗状況を把握する必要があると認める場合には、各年度終了後すみやかに当該年度における概要報告書を提出すること。

3 出土品の適切な取扱いについて
 発掘調査による出土品については、次の事項について、適切な取扱いを確保することが必要であること。
(1)遺失物法による手続
 発掘調査による出土品については、調査主体に対して、遺失物法による埋蔵物としての警察署長への提出を適切に行う必要があることを徹成すること。
(2)公的機関による一括保管
 出土品の散逸を防ぎ、その確実な保護を行うため、可能な限り地方公共団体その他の公的機関が一括して保管できるようにすること。
(3)出土品の貸出
 都道府県に帰属した出土品を研究資料として貸し山す場合は、その種類・数量・等必要な事項を記録するとともに、貸出に預かり証を提出させるなどの所要の手続を徹底すること。

4 事務に当たっての留意事項について
 上記1から3までのほか、都道府県教育委貝会において、埋蔵文化財の発掘調査に関する事務を行うに当たっては、次の事項について留意することが必要であること。
(1)第三者からの意見聴取
 上記1の確認及び2の指示にあたっては、遺跡の性格・内容、重要性や是正すべき計画内容等にかんがみ必要があると認める場合は、学識経験者・専門家等により構成される委員会を設けるなど、第三者の意見を聞く機会を設けるようにすること。
(2)報告書・出土品の公開
 提出を受けた発掘調査の概要報告書・発掘調査報告書や保管した出土品については、文化財として活用することや歴史学・考古学等の研究資料として活用することが望まれるものであり、埋蔵文化財センターや博物館などにおいて積極的に公開する必要があること。

5 地方公共団体が施行する発掘調査について
 法第58条の2の規定により都道府県教育委員会が施行する埋蔵文化財の発掘調査についても、上記1から4までの趣旨を踏まえ、適宜改善を図る必要があること。

6 市町村教育委貝会への周知
 都道府県教育委員会においては、域内の市町村教育委貝会に対しても、上記1から5までの内容について、周知を図る必要があること。
 また、域内で行われている発掘調査が適切に行われているかどうかについて把捉するため、市町村教育委員会と十分に連絡を取り合う必要があること。


縄文学研究室トップ法令集トップ管理人:Nakamura Kousaku
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