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【1954年】
【『東京都文化財保護提要』より】
文委企第50号  
昭和29年6月22日

各都道府県教育委員会教育長 殿
文化財保護委員会事務局長

文化財保護法の一部改正について

 昭和29年5月29日法律第131号をもって文化財保護法の一部を改正する法律が公布され、7月1日から施行されることとなりました。このたびの改正は、昭和25年8月文化財保護法(以下「法」という)施行後3年有半の同法の運用の経験にかんがみ、その規定を整備したものでありますが、その主要な点は、次の通りであります。

一 重要文化財について新たに管理団体の制度を設けたこと。
二 無形文化財について新たに指定制度を設ける等その保護の規定を整備強化したこと。
三 民俗資料の保護に関する制度を有形文化財の保護に関する制度から切り離して確立したこと。
四 異議申立の制度等史跡名勝天然記念物等の保護と所有権等の財産権及び他の公益との調整に関する規定を設けたこと。
五 史跡名勝天然記念物等の無断現状変更等に対し、現状回復命令の制度を設けるとともに、刑罰を課しうるものとしたこと。
 以上のようにこのたびの改正は、基本的な事項の改正を含みその他法全体にわたる改正を行ったものもありますので、その実施運用に当っては、別記事項をご参照の上、遺憾のないよう御配慮下さい。
 なお、このたびの法改正に伴う所要の委員会規則については、追って制度改廃の上通達する予定であります。


(略)

第5 埋蔵文化財関係
1 理蔵文化財については、従来有形文化財の章中に規定されていたのであるが、今回の改正において、民俗資料を有形文化財から切り離して規定したことに伴い、埋蔵物である「文化財」には当然有形文化財のみならず、民俗資料も含まれることとなるほか、貝塚、住居跡等の記念物もこれに含まれると解すべきであるから、今回、埋蔵文化財に関する規定は、独立した一章として、第四章に規定したこと。
 註(1)埋蔵文化財に関する章は、右の趣旨から明らかなように、むしろ、史妨名勝天然記念物に関する章の次に規定するのが適当であると考えられるのであるが、改正上の技術的制限もあって、今回は独立した一章として、民俗資料に関する章の次に規定することに止めたのである。
 註(2)従来埋蔵文化財とは、地下、水底その他の人日に触れ得ない状態において埋蔵されている有形文化財をいうものとされ、法第57条は、この埋蔵物である有形文化財を発掘しようとする場合の届出義務を規定したものと解されていたのであるが、発掘の対象となるのは土地であって埋蔵文化財は調査の対象なのであり、仕居跡、寺跡等も埋蔵文化財である。そして、この調査の結果発見された動産である文化財については、遺失物法に基く事後手続が行われるものと解するのが適当であると考える。このことについては、以下の改正点の説明を参照されたい。


2 埋蔵文化財の濫掘を防止し、委員会による指導を十分にするため、埋蔵文化財の調査のための発掘の事前届出期限を十日間延長して三十日としたこと(法第57条第1項)。
 註 従来、法第57条第1項において、史跡に指定された土地の発掘について届出を不要とした趣旨は、当然現状変更の許可申請があるものとしたことによるのであろう。しかし、その他の場合でも現状変更の許可申請が行われれは、発掘調査の届出を要しないし、又、緊急を要し三十日前に正規の届出を行ぅ暇のない場合等も予想されるので、正規の届出を要しない場合ほ別に委員会規則で定めることとして、その他の場合は、広く届出を要するものと規定を改めたのである。


3 土木工事、開発その他埋蔵文化財の調査以外の目的で行われる発掘についても、それが古墳、貝塚その他埋蔵文化財を包蔵する土地として周知されている土地を発掘しようとするものであれば、三十日前の事前届出を要するものとし、委員会は、これについて必要な指示を行うこととしたこと(法第57条の2)。

(1)埋蔵文化財を包蔵する土地として周知されている土地とは、貝塚、古項等外形的に判断しうるもののほか、伝説、口伝等により、その地域社会において埋蔵文化財を包蔵する土地として広く認められている土地をいう。できうれは都道府県教育委員会において包蔵地域として周知されているものをあらかじめ調査されておかれることを希望する。

(2)本条第2項の指示の内容としては、比較的重要な遺跡を発掘しようとするものについて特に慎重な発掘方法を指示するとか、或は発掘後遺跡の復旧又は報告書の提出に協力を求めるとか、又は出土品について遺失物法に従って手続を行うよう指示する等が考えられるのであって、発掘の中止、停止に至る内容をもつものは、指示し得ないものと解する。

(3)法第57条の2の規定を設けた趣旨は、土木工事等により貴重な遺跡が破壊される以前に調査を行い、又は工事中立ち合って遺物の散逸を防止し、記録を作成する等遺跡の保存、記録等のためできる限り適切な措置をとろうとするにあるのであるから、この趣旨を徹底され届出の励行、指示内容の尊重について関係者の協力を得られるよう指導されるとともに、特に法第57条の発掘調査の届出を行うべきものが、法第57条の2の規定に該当するものの如く偽装して行われることのないよう、脱法行為には、厳に注意されたい。

 註(1)従来は埋蔵文化財の発掘が直接の目的でなくても、古墳等を発掘し、結果において埋蔵文化財を発掘することが明白な場合は法第57条第1項の届出を要するものとして取り扱っていたのであるが、工事中に発見された遺跡についてさらに工事を続行する場合等を発掘調査の場合と同様に取り扱うことには実際上無理があるので、今回取扱を明確にして届出の励行を期したのである。
 註(2)法第57条の2第1項の届出をせず、又は同条第2項の指示に従わなかった場合については、特に罰則の規定は設けていない。
 註(3)法第57条の2第1項の届出の有無に拘らず土木工事等により遺跡を発見した場合は法第84条第1項の遺跡発見の届出を行わなけれはならない。発見届出を行った遺跡についてさらに工事等を続行する場合には法第57条の2第1項の届出を要する(法第57条の2第1項の届出に係る工事により遺跡を発見した場合を除く。)と解されるが、これについてはなお法第84条に関する項を参照されたい。)


4 以上のほか、必要な条文の整理を行つたこと。
(1)法第58条の改正は、法第57条について説明したとおり、発掘の対象は土地であるとしたことに応じて字句を整理したものである。

(2)法第59条の改正は、従前の規定は、発掘により文化財を発見した場合において、そのものの所有者が判明している場合でもこれを所有者に返還するか否か不明確であるので、所有者が判明している場合は、所有者に返還する旨を明確にしたものである。

(3)法第64条の改正は、第1項については、従前の規定は、文化財を警察署長から提出されたものに限り、委員会が自ら発見したものが含まれていないこと及び国庫帰属の不明のものについても適用があると解される点に不備があるのでこれを国庫に帰属した文化財と改めて明確にしたものであり、第2項については、第1項と同趣旨の改正のほか、埋蔵文化財は、埋蔵物である文化財であつて発掘により発見されたものはすでに埋蔵物ではなく有形文化財又は民俗資料としての文化財であることを明らかにしたものである。なお前記したとおり埋蔵物である文化財としては、記念物も含まれるのであるが、発見された文化財として、警察署長への差出、委員会への提出、国庫帰属、譲与、譲渡等の対象となるのは動産である文化財に限ると解すべきである。


第6 史跡名勝天然記念物関係

(中略)

11 遺跡発見の届出があった場合は、委員会は、当該遺跡の保護上必要な事項を指示し得ることとしたこと(法第84条第2項)。

(1)この場合は、緊急に現状を変更する必要があるか否かを考慮し、遺跡の現況に応じて調査方法、保存上望ましい措置等必要事項を指示するのであるが、土木工事等により工事中に発見された場合等特に緊急を要する場合には、委員会は、都道府県教育委員会その他専門家による調査に対する協力方依頼、出土品の取扱方法、事後の工事施工上注意すべき事項等を指示することとなろう。

(2)遺跡発見の場合は「その現状を変更することなく」届け出るべきこととなっており、第2項の指示があるまでは、現状を保存するよう指導されることが望ましい。

 註(1)工事の停止、中止等が指示し得ないのは、法第57条の2第2項の指示の場合と同様である。
 註(2)法第57条の届出を行って、遺跡を発見した場合は、発見届出は不要とした(法第84条第1項但書)。これは、発掘調査報告書の提出等が行われるからである。
 註(3)法第57条の2の届出を行った場合でも、遺跡発見の届出を行う義務はあり、発見届出に係る遺跡について工事等を続行する場合は、法第57条の2の届出を要する(法第57条の2第1項の届出に係る工事等により遺跡を発見した場合を除く。)。但し、緊急の場合には、電報その他をもって委員会の承認を得ることにより、正規の届出に代えうるよう措置する方針である。

(以下略)



縄文学研究室トップ法令集トップ管理人:Nakamura Kousaku
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