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【1960年】
【「埋蔵文化財保護の手引き」(神奈川県教育委員会)より】
昭和35年3月15日

各都道府県教育委員会教育長 殿
文化財保護委員会事務局長

海底から発見された物の取扱いに関する疑義について(通知)

 このことについて別紙甲のとおり照会したところ、別紙乙のとおり回答を得ましたので参考までにお知らせします。




別紙甲

海底から発見された物の取扱いに関する疑義について

(昭和34年8月3日 文委庶第26号 文化財保護委員会事務局長から法制局第一部長あて照会)

 標記のことについて下記の通り疑義がありますので貴見を承りたくお伺いします。
 なお、このことについては、事務処理上さじ迫った問題もありますので、至急御回答をお願いします。


1 文化財保護法(昭和25年法律第214号)第60条に規定する遺失物法(明治32年法律第87号)第13条で準用する同法第1条第1項の規定により差し出される埋蔵文化財とは海底発見された物も含むと解してよいか。

2 文化財保護法第63条第2項の規定により埋蔵文化財の価格に相当する額の報償金に対して発見者と折半して受給権を収得する当該埋蔵物の発見された土地の所有者とは、領海内の海底については、国と解してよいか。

3 この照会を必要とする具体的事情は次のとおりである。
 昭和32年2月2日午前11時30分頃、東京都大島町岡田勝崎海岸沖合250メートルの地点において、折からあわぴ漁に出漁中の同町岡田漁業組合所属船三宅丸が、海底15メートルの海底から小判を発見し、さらに近くの砂に埋もれていた同様のもの8枚を発見した。
 そこで同海底には、なお小判が埋もれているものと推定し、同組合の他の所属船とともに潜水夫を入れて発掘の結果、都合73枚を発見した。さらに同月10日同様の発掘を行い引き続いて小判27枚、一分金3枚、同月20日に一分金1枚を発見し、合計小判103枚、一分金63枚計166枚が引き上げられた。(大島警察署長の届出通知より)


別紙乙

 海底から発見された物の取扱いに関する疑義について

(昭和35年2月18日 法制局一発第2号 法制局第一部長から 文化財保護委員会事務局長あて回答)

 昨年8月3日付け文委庶第26号をもって照会にかかる標記の件に開し、次のとおり当局の意見を回答する。

1 問題

(イ)文化財保護法第60条に規定する遺失物法第13条で準用する同法第1条第1項の規定により埋蔵物として差し出される物件には、海底から発見された物件を含むと解することができるか。

(ロ)文化財保護法第63条第2項の規定により、同条第1項の報償について発見者と折半して支給を受ける土地所有者とは、領海における海底については、国と解することができるか。

2 意見及び理由

(イ)民法第241条及び遺失物法第13条にいう埋蔵物とは、長期間、土地その他の物の中に包蔵され、その所在を発見しがたい状態にあったため、発見された際においては、その所有権が何人に属するかを容易にに識別することができなくなった物件をいうのであるが、その包蔵の状態については、海底に埋没している状態を含むことはもちろん、海水等液体である物が右にいう「土地その他の物」に含まれないと解するいわれはないから、海底から発見される物件も、長期間、海底にあって、その所在を発見しがたい状態にあり、発見の際にはその所有権の帰属を容易に識別することができなかったという要件を満たす限り、民法第241条及び遺失物法第13条にいう埋蔵物であり、これらの規定及び文化財保護法第60条から 第65条までの規定の適用を受けるものと解する。
 これに対しては、水難救護法第2条が「沈没品」について規定しているところからいって、海底にある物件は埋蔵品をも含めて同法にいう沈没品であり、したがって、お示しの物件は埋蔵物に係る前述の規定の適用を受けるべきではなく、水難救護法の第2条の規定の適用を受けるべきであるとする見解があるかも知れない。
 しかしながら、水難救護法にいう沈没品とは、占有者の意思に反し、その所持を離れ、現に海底にある物件を意味するのであって、民法第240条にいう遺失物に該当し、民法第241条にいう埋蔵物を包含しないものと解すべきであろう。けだし、民法は、第240条において、「遺失物ハ特別法ノ定ムル所ニ従ヒ公告ヲ為シタル後6ケ月内ニ其所有者ノ知レサルトキハ給得者其所有権ヲ取得ス」と規定し、第241条において「埋蔵物ハ特別法ノ定ムル所ニ従ヒ公告ヲ為シタル後6ケ月内ニ其所有者ノ知レサルトキハ発見者其所有権ヲ取得ス但他人ノ物ノ中ニ於テ発見シタル埋蔵物ハ発見者及ヒ其物ノ所有者折半シテ其所有権ヲ取得ス」と規定して、遺失物及び埋蔵物に対する取扱の基本を表現しているところからいって、水難救護法上、発見者ではなく拾得者が所有権を取得することとされている沈没品(第28条第1項及び第2項参照)は、民法第240条にいう遺失物であって、第241条にいう埋蔵物を包含しないものと解すべきは、当然だからである。
 お示しの海底から発見された物件が埋蔵物であるか、沈没品であるかは、にわかに判断することはできないが、お尋ねの文化財保護法第60条に規定する遺失物法第13条で準用する同法第1条第1項の規定により埋蔵物として差し出きれる物件には、海底から発見された物件を含むかという点については、以上に述べたところにより、積極に解する。

(ロ)文化財保護法第63条第2項は、同法第59条第1項 又は第61粂第2項に規定する文化財でその所有者が判明しないものの所有権が国庫に帰属する場合において、当該文化財の発見者とその発見された土地の所有者とが異なるときは、委員会は、当該文化財の価格に相当する報債金を折半して支治する旨を規定している。
 ところで、領海における海底について、国が文化財保護法第63条第2項にいう「土地の所有者」であるかどうかの疑問が生ずるゆえんは、領海が条理上私権の対象となるものではないとされていることにあるのであろう。しかしながら、領海が条理上私権の対象となるものではないとされるのは、領海について、国が本来排他的支配権を有するものであることを否定するのではなく、むしろそのことを当然の前提とし、国以外の者が排他的支配権をもつことができるのは、領海の公共性に反しないものとして、特に国からその権利を与えられた場合に限られることを意味するのであるから、国が文化財保護法第63条にいう「土地の所有者」であるとするのを相当とする。
 以上によってお示しの問題は、積極に解する。



縄文学研究室トップ法令集トップ管理人:Nakamura Kousaku
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